指導変革の軌跡 愛知県・私立一宮女子高校
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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数多くの行事で進路を考えるきっかけに

 幸せを追求するためには、進路について考えるきっかけを数多く提供することも大切である。従来、同校では進学・就職に向けた具体的な指導が始まるのは、2年次後半からだった。しかし、卒業までの1年弱では、じっくり腰を据えて将来に向き合う時間が取りにくい。
 そこで、03年度に3年間の進路指導を体系化させた。1年次1学期には大学見学バスツアーや進路報告会などを盛り込み、早くから進路について考えられるようにした。一見、総花的とも思える豊富なプログラムだが、青山教頭は「多くの機会を与えること自体が大切」と話す。
 「性格や感性は生徒一人ひとり異なります。同じ活動でも、ある生徒にはよい刺激になっても、別の生徒は何も感じないかもしれません。できるだけ多くの行事を設け、進路を考えるきっかけにさせたいのです」
 また、新しい学習プログラムも取り入れた。「ベースとなる知識がなければ考えることはできません。学習は幸福を追求するための重要なステージ」と、青山教頭は強調する。
 同校が学習指導の充実を図る上で留意したのは、いかに生徒の実態に応じた指導を行うかという点だった。そこで、まず全教科の年間授業計画を策定し、授業の狙いや内容を明確化。その上で、全教科の授業のポイントをまとめたオリジナルの教材をつくり、生徒の学力や理解度に応じた授業を行うよう心がけた。
 教材は授業ごとに用意し、授業の要点だけでなく、復習教材として使える演習問題や家庭学習用の課題なども提示した。5教科についてはセンター試験に対応できるレベルだ。「近年、家庭学習の習慣がついていない生徒が増えています。どこがわからないのかが自分で明確になれば、学習にも前向きに取り組めるようになるでしょう」と青山教頭は話す。

オリジナルの教材で指導レベルを確保

 オリジナル教材を導入した背景には、生徒の学力伸張と共に、教師の指導力向上を促すという狙いもあった。鵜飼先生は、「教科内で話し合いながら教材をつくることで、指導力を向上させると共に、どの教師が教えても一定の指導レベルを確保できるようにしました」と話す。この背景には、同校の教員の年齢構成の変化がある。改革に着手した03年度以降、毎年多くの若手教師が赴任しており、教師間の共通理解を深め、指導の標準化を図る必要があったのだ。
 同校にはあらゆる場面で教師間の共通認識を深める仕掛けがある。学校行事のあとには担当した業務に関する報告書を提出するが、それらはすべて回覧している。会議では経験の浅い教師は発言しにくいものだが、報告書であれば全員に発言機会が与えられ、かつ教師全員が目を通すことができる。報告書は保存して、次年度に向けて企画をブラッシュアップさせる際の参考にもなる。また、オリジナル教材はすべてデータ化して校内データベースに蓄積されており、いつでも利用できる。あらゆる指導のノウハウを共有することで、教師間の共通理解と指導力の向上を促しているのである。
 すべての行事の運営に全教師が関与するのも、同校の特徴の一つだ。1年生の取り組みであっても、3学年の教師全員が何らかの業務を担当する。例えば、外部講師を招いての講演会では、生徒と講師をつなぐファシリテーターとしての役割、会場までの案内などの接待も教師の大切な仕事だ。小さな役割であっても、すべての教師に業務を割り振ることで、学校の一体感が高まり、担当学年で行う際の参考にもなるのである。
 「幸せを追求するのは、生徒だけではありません。私たち教師もさまざまな経験を通して自らを高めていく努力をし、教師という仕事を通して幸せを追い求めることが大切なのです。また、行事運営や生徒と接する時間を捻出することも重要です。本校では、会議の時間を減らすようにしています。日々の連絡はパソコンを見ればわかるようにしていますし、行事の際も企画書を必ず作成し、事前に共有しています」(青山教頭)


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