特集 「自立する高校生」をどう育てるのか
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
  PAGE 8/11 前ページ  次ページ

■ 授業と生徒の適合度
進学校では成績下位層にも 適切な授業ができている

 最後に、今後の指導を考える上で重要な視点を示唆しているデータ二つを紹介する。一つめは、指導の中心となる授業についてである。
 高校生にとって、授業は適切なものになっているのだろうか。それを測る上で参考になるのが、「レリバンス(教師による授業の適切性)」と「レディネス(生徒による授業への準備状態)」だ。「レリバンス」は教師や授業に対する高校生の満足度を、「レディネス」は生徒自身の授業に対する態度や行動に見られる参加度を示す指標だ。
 図には示していないが、レリバンスとレディネスの関係を学力層別に見ると、学力の高低にかかわらず、ほぼ一貫して「レディネス」が「レリバンス」を上回っている。成績下位層ほどその開きは大きいが、上位層になるにつれてその差は縮まり、最上位のS2レベルではレリバンスがレディネスを上回る。学力レベルの高い生徒は、自分のレディネス以上に、授業に適切性を感じているということになる。

図5

グラフが回帰曲線より上にある場合は、レディネス<レリバンスで、授業への満足度が高いことを表す。一方、グラフが 回帰曲線より下にある場合は、レディネス>レリバンスとなり、授業への満足度50 が低いことを表す
※C1〜S2(学力到達度の区分)は、進研模試による偏差値を表示。
C1…33未満
C2…33〜38未満
C3…38〜43未満
B1…43〜48未満
B2…48〜53未満
B3…53〜58未満
A1…58〜63未満
A2…63〜68未満
A3…68〜73未満
S1…73〜78未満
S2…78以上
※A校群〜D校群については以下の条件で全国より抽出
A校群:進研模試偏差値58以上の生徒が80%以上の学校
B校群:進研模試偏差値58以上の生徒が50%以上80%未満の学校
C校群:進研模試偏差値58以上の生徒が30%以上50%未満の学校
D校群:進研模試偏差値58以上の生徒が5%未満の学校

*ベネッセ教育研究開発センター「確かな学力の育成をめぐる課題と展望」(08年5月刊)。有効回答数は、A校群3,131人、B校群1,264人、C校群2,004人、D校群2,248人(すべて高校2年生)

 更に興味深いのは、 図5に示した学校群との学力到達レベル別に見た高校生の授業に対するレリバンスとレディネスの関係である。A校群のデータに注目すると、B2・B3の学力層の生徒が回帰曲線より上に位置している。つまり、A校群では成績下位層の生徒に対しても、その学力に合った指導ができていることを示している。このため、A校群では成績下位の生徒が上位に食い込む現象がしばしば起こる。そうした生徒に刺激されて、成績上位層も相対的に伸びていくメカニズムが働いているといえるだろう。
 やる気はその人の属性ではなく、その人の置かれている状況、すなわち学校文化や学校力との相互関係の中で生まれるものであり、そのために多様な視点で動機付けを考える必要があるといえよう。


  PAGE 8/11 前ページ 次ページ
目次へもどる
高等学校向けトップへ