特集 つなぐ教師の教科指導力
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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生徒による授業評価を授業改善に活用

 富山高校で「互見」授業を始めた03年度は、保護者や中学生を招いての公開授業を始めた年でもある。公開授業は毎年5月のゴールデンウイーク明けに1日設けている。授業はだれでも自由に見ることができ、参観者は所定のシートに感想を書く。08年度は中学生や中学校教師、保護者ら約560人が参観した。
 「中間考査前の重要な授業の1コマですから、中学生対象の公開授業といっても特別に派手なことはしません。ありのままを見てもらっています。ただ、学校外の方に見てもらえるだけの授業をするにはもっと力量を高めなければならない、という意識が生まれますし、自分の授業を振り返る良い機会にもなります」(神田先生)
 参観者の感想で参考になるのは中学生のものだと、沢井教頭は話す。
 「『英語の授業では文字を筆記体で書くのに驚いた』『先生が一方的に話す授業が多かった。もっと生徒に発言させてもよいのでは』といった中学生の感想を読むと、生徒が中学校と高校の授業のどこにギャップを感じるのかが見えてきます。入学時の初期指導を行う際のヒントにしています」
 同様に「生徒による授業評価」も、生徒の実態の把握と、授業改善に役立てる。これは、全学年の生徒を対象に各学期にアンケート用紙を配付し、教科ごとに「自分の受講態度」と「教師・教科の授業内容や方法」について評価をするというもの(図3
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図3
生徒に配付する授業評価のシート。質問項目は、授業中の態度について4項目、授業内容・方法について11項目ある。無記名で、率直な回答を求めている
 「教師の声の聞き取りやすさや、板書の字や内容の読みやすさに関する評価が低かった場合は、当然改善しなくてはなりません。ただ、授業のスピードや宿題、課題の量などに関しては、進学校として求められる授業進度や課題の量がありますから、生徒の評価が低くても変えるわけにはいきません。授業評価は、あくまでも生徒が授業をどう感じているかという指標として活用しています」(神田先生)
 例えば、古文で「予習に十分に時間をかけていない」と自己評価をしている生徒が多かった場合、これは「予習をしなくてもついていけるレベルの授業になっているためであり、もう少し授業の難度を高めてもよい」とも判断できる。授業評価を通じて生徒の実態を測りながら、授業を改善するわけだ。
 このように、富山高校では「互見」授業を軸に公開授業と授業評価の三本柱で、教科指導力や授業の質の向上を図っている。
 「『互見』授業や公開授業を通して、他者の授業を見ることによって生徒の実態を客観的に把握できると確信するようになりました。ほかの先生から授業評価を受けることに対して、教師の抵抗感はほとんどなくなりました。これからも組織として教師の教科指導力や授業力を高めていくための努力と工夫を続けていきたいと考えています」(沢井教頭)

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