指導変革の軌跡 和歌山県立桐蔭高校「進路学習の効果的な継続」
嶋田博文

▲和歌山県立桐蔭高校

嶋田博文

Shimada Hirofumi
教職歴27年。同校に赴任して15年目。総務部長。「生徒とは付きすぎず、離れすぎず、距離を保ちながらよい関係を築きたい」

井松友希

▲和歌山県立桐蔭高校

井松友希

Imatsu Tomoki
教職歴28年。同校に赴任して13年目。進路指導部長。「生徒には、いろいろなことに耳を傾けられる人間になってほしい」

宇治田元則

▲和歌山県立桐蔭高校

宇治田元則

Ujita Motonori
教職歴26年。同校に赴任して6年目。1学年主任。「何事にも楽しみながら、意欲的に取り組む生徒を育てていきたい」

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「桐蔭総合大学」で知的好奇心を刺激する

 「桐蔭総合大学」は、中学校説明会で強力なアピール材料となった取り組みの一つである。大学教員を招いて出張講義を行う進路行事で、01年度に始めた。1、2年生対象で3月に実施している。導入時の苦労、運営のポイントについては、小誌01年度6月号で紹介した。
 導入から9回目を迎え、「桐蔭総合大学」は有効な進路行事の一つとして定着している。環境の変化や生徒の要望に合わせて改善してきたからだろう。例えば、当初の参加大学は近畿圏の国公立大・短大のみだったが、現在は北海道から九州まで拡大、半数は近畿圏外の大学だ。生徒にとってイメージがわきにくい、近畿以外の大学の空気を身近に感じられるメリットは大きい。
 進路指導部長の井松友希先生は、「高大連携を進める大学が増え、大学教員も高校生に慣れてきています。導入時に比べ、講義の質が格段に向上しています。高校生向けに噛み砕いた内容ながらも、生徒の知的好奇心をくすぐる講義が増えています」と評価する。生徒の評価も高く、事後のアンケートでも9割以上の生徒が「進路決定への参考になった」「大学講義への興味・関心がわいた」と答えている(図2)。
図2

 一つの講義につき教師1人が監督に付くが、配置は本人の希望を基に決める。当初は希望制ではなかったが、知見を広げて指導力を高めてもらおうと変えた。数学担当の井松先生は、数年前に一橋大経済学部の講義を聴いた。
 「担当教科が金融の最先端でどのように使われているのか、具体的に理解できたのは大きな収穫でした。今の学びが社会でどのように生きているのか、将来どのようにつながっていくのか、具体的に生徒に示せるようになりました」
 毎年、生徒にアンケートを取り、感想や講座の写真などを掲載した通信を作成・配付し、成果を共有している。生徒にも教師にも役立つ取り組みだということが学校全体に認知されているから、形骸化せずに続いているのだろう。


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