指導変革の軌跡 大阪府・私立追手門学院中学校・高校
表弘之

▲追手門学院中学校・高校

表弘之

Omote Hiroyuki
教職歴・赴任歴共に14年。学習推進部長。「どんな人間も『一長一短』。良いところを認め、共に学び、共に働く」

谷川譲二

▲追手門学院中学校・高校

谷川譲二

Tanigawa Joji
教職歴10年。同校に赴任して9年目。6年一貫教育部。「生徒、先生とのつながりを大切にし、誇りを持てる教育をしたい」

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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若手が発言しやすいよう5、6人のグループで議論

 「委員会に参加する10人ほどの教師だけでは、学校の将来像を描くことに限界がある」、そう感じた佐々木校長は、委員以外の教師にも自由に参加してもらうように呼び掛けた。組織の規模を拡大し、キャリア、校務分掌、教科の壁を越え、教師が学校の未来について自由に話し合う場にするのが狙いだった。
 中高一貫校の1期生が高校に進学した04年度には、中高の接続についての議題はいったん解決したものとして「6年制委員会」の機能を縮小し、「6年制推進プロジェクト」に引き継いだ。これまで行ってきた学校のあらゆる機能についての話し合いの場は、隔週で開く「学習会」として継続した。その頃には、参加者は全教師の5、6割程度に当たる30〜35人となり、議論もより熱気を帯びたものになっていた。
 安定的に生徒募集を行う方法、進学実績を高めるための指導方法など、議題はさまざまだった。「学習会」の開催は18時30分〜20時が基本だったが、30分以上の延長も珍しくなかった。「6年制委員会」の時代から参加している表弘之先生は、次のように振り返る。
 「『学習会』での議論を通して、他の先生も自分と同じように、学校の行末に対して不安や悩みを抱えていることが分かりました。互いに思いを打ち明けることで一体感が生まれ、方向性が定まることも実感しました
  佐々木校長は、「学習会」が改革の方針を定めるだけでなく、教師の思いを共有し、意思統一を図る場になっていたと話す。
 「今でも、表先生が学習会の場で定員割れの対策のために夜遅くまで学校に残り、『生まれたばかりの子どもの顔も見られずにつらいけれども、何とか頑張りたい』と涙をこぼして決意を語っていたのを思い出します」
 「学習会」の運営には工夫が凝らされた。当初は、職員会議のように一堂に会し、挙手をして発言する形式だった。しかし、若手教師から「発言しにくい」という意見が出され、変更。5〜6人のグループに分かれて議論を進め、一定時間が過ぎた後、各グループの議論を3〜5分程度で発表し、担当者が各校務分掌に持ち帰って、新規企画の立案や修正に生かす形式にした。出された中で良い案は、できるだけ制度化するようにもした。教師の自己効力感を高め、改革意欲を喚起する工夫である。
 「提案はできるだけ実現に向けて検討しました。自分の考えが形になることは、教師のやる気につながります。これにより、更に学校を元気付けたかったのです」(佐々木校長)
教育理念の実現に向けた取り組み
 追手門学院中学校・高校は、社会のニーズに合致させ、生徒が集まるような改革を進めてきた。今後は、教育の「不易と流行」の「不易」の部分に目を向け、教育理念に基づく指導に力を入れる。
 教育理念「独立自彊(きょう)・社会有為」、教育目標「『自律・協同・創造』の精神を有し『社会に貢献』する人材の育成」の実現に向けて、09年6月には、全教員を対象にアンケートを実施し、各指導がどの理念に位置付くのかを一覧にまとめた。例えば、「生徒による週間計画の策定」=「自律・創造」、「理科の実験」=「協同・創造」など、学習活動が教育理念のどの部分に対応しているのかを明示し、最終的にシラバスにまとめる予定だ。佐々木校長は、「教育理念に基づく、ぶれない指導の核をつくると共に、教員文化を高めていきたい。『志願者が減るのではないか』という後ろ向きな緊張感ではなく、『教育理念をスローガンで終わらせずに、しっかり実践していこう』という前向きな緊張感を、教師一人ひとりが持てるようになる」と改革の意図を語る。

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