特集)学力下位層の拡大にどう向き合うか
狩野直樹

▲群馬県立富岡高校

狩野直樹

Kanou Naoki
教職歴17年。同校に赴任して4年目。進路指導部。「努力こそただ一つの道であることを生徒に伝えたい」

清水義博

▲群馬県立富岡高校

清水義博

Shimizu Yoshihiro
教職歴13年。同校赴任歴8年目。進路指導部。「生徒に最後まであきらめない意志の強さを持って欲しい」

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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夢や志望を考えさせ、生徒の学習態度を変える

 「サクセスシステム」と「ドリームプラン」は、自転車の両輪の関係にある。夢や希望が後輪(ドリームプラン)となって、前輪(サクセスシステム)である日常の生活や学習習慣を力強く前進させる。高橋先生は次のような期待を寄せる。
 「将来の目標がなかなか持てない中で“Must”である学習に取り組んでも、望ましい効果は期待できません。『ドリームプラン』によって具体化した夢や志望が、日常的な生活や学習を点検・改善させるための動機付けとなり、自律的な学習態度や、厳しい受験を乗り越える精神力が身に付くと考えています」
 学習習慣の定着は、生徒の自律的な改善だけに委ねるわけではない。「サクセスシステム」で得た学習時間や生活態度のデータは面談の材料とし、全体的に改善すべき問題が見られたら、学年集会やLHRなどの機会に繰り返し改善を呼び掛ける。
 「黒門プロジェクト」1期生で、国公立大合格者が過去最高の83人を記録した07年度3年生は、前輪と後輪がうまくかみ合った学年だった。同学年担任を務めた清水義博先生は、次のように当時を振り返る。
 「その学年が2年生の時のことです。テーマ研究や大学模擬講義を終え、11月の模試を迎えたころ、生徒が『過去問に取り組みたい』と言ってきました。その中には成績上位者だけでなく、中下位の生徒もいました。過去に生徒自らが言い出したことはなかったので驚きました。生徒の中で“Want”と“Must”がつながり、自律的な学習意欲が芽生えたことを強く感じた瞬間でした」
 いつもは閑散としていた200人収容の自習室に、生徒の姿が多く見られるようになったのは、その頃からだった。テーマ研究で釣り糸の研究に取り組んだ生徒は、それをきっかけに繊維学部へ進んだ。その生徒は釣り好きで、必ずしも成績は良くなかったが、プロジェクトをきっかけに夢を見つけ、それを学習意欲につなげることができたのだ。

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