指導変革の軌跡 宮城県・私立古川学園中学校・高校
VIEW21[高校版] 新しい学校再生のパートナー
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教科指導を通して生徒の人間的成長を促す

 取り組みの見直しと併せ、生徒との密なコミュニケーションも心掛けた。学年ごとに面談期間を設け、きめ細かい生徒把握に努めた。また、毎日の質問の合間に交わされる雑談の中にも、生徒が発する兆候を見逃さないよう注意する。1学年主任の成本豊先生は、次のように話す。
 「教科指導を通して生徒とかかわる時間が多いのが、本校の特徴です。朝8時の登校から、校門が閉まる20時までの間、教師は、授業はもちろん、休み時間や放課後も生徒の質問攻めにあいます。課題を提出しない、いい加減に取り組んでいる生徒がいれば、原因は何かを考え、生徒に話を聞きます。厳しい受験勉強にあきらめかけてしまう生徒も出てきます。そうさせないためにも、教科指導を通して生徒の内面の変化を探り、変化を見逃さないことが大切なのです
 勉強合宿などの宿泊行事も、生徒把握に欠かせないという。勉強合宿では1日12時間以上の学習をする。1、2日目はいつも通りに生活している生徒も、疲れがたまってくると次第に生活がいい加減になっていく。その時に、生徒の「人間力」が垣間見えると、俣野教頭は話す。
 「本校では入学当初から、生徒に『一流の高校生になれ』と呼び掛けています。大学受験では、学力はもちろん、学習に向かう姿勢や日常生活を含めた『人間力』が問われます。勉強合宿は、普段からきちんと生活している生徒にとっては何でもないことですが、保護者に任せっきりにしている生徒は、必ず生活が乱れてきます。布団を畳めない、服は脱ぎっ放し。そういう生徒は、成績が良くても、受験のピークを迎えると、生活は乱れ、精神的にも不安定になり、最後には競り負けてしまうのです。合宿は、日常生活の様子を見て高校生としての自覚を促すことも、重要な目的の一つです」
 環境変化の波を乗り越え、順調な進学実績を上げ続ける古川学園中学校・高校。だが、本田先生は「改革は道半ば」と言い切る。
 「あいさつや服装、言葉遣い、礼儀など、日常生活については、改善すべき点がたくさんあります。学校行事や生徒指導の中で、『一流の高校生』になれるよう鍛えていくのがこれからの課題です。それが出来た時、本校の更なるステップアップが実現するのではないでしょうか。簡単なことではありませんが、教師が力を合わせて取り組めば必ず達成できると信じています」
 08年には併設の中学校が開設された。今後は中高の接続など、中高一貫校ならではの課題も待ち構えている。教師の地力が問われるのは、むしろこれからなのかもしれない。

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