指導変革の軌跡 宮崎県立高原高校
上池恭廣

▲宮崎県立高原高校教頭

上池恭廣

Kamiike Yasuhiro
教職歴23年。同校に赴任して2年目。「努力の積み重ねが明日の力に結び付くということを、生徒に伝えていきたい」

栗屋勉

▲宮崎県立高原高校

栗屋勉

Kuriya Tsutomu
教職歴36年。同校に赴任して7年目。教務主任。「継続は力なり(習慣は第2の天性)をモットーに基礎学力定着に努めたい」

相星正人

▲宮崎県立高原高校

相星正人

Aiboshi Masato
教職歴33年。同校に赴任して1年目。生徒指導主事。「生徒の進路実現、自己実現のための生活指導を心掛けていきたい」

VIEW21[高校版] 先生方とともに考える 新しい進路指導のパートナー
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漢字テストで小さな成功体験を積み重ね、「自己達成感」を高める

 取り組みの形骸化が進んだが、同校最大のテーマが「基礎学力の保障」であることに変わりはなかった。今度こそ、取り組みをより効果的で、継続可能なものにしていく必要があった。
 まず取り組んだのは、「つめくさタイム」に替えて、漢字テストを基礎学力定着の中心に据えることだった。教務主任の栗屋勉先生は、その狙いを次のように話す。
 「取り組みを継続させるには、むやみに手を広げず、いかに学校の実態に即した取り組みにできるか、そして、教師全員の合意を得られるかにかかっていると思います。『つめくさタイム』が続かなかった要因として、教師間で『基礎学力とは何か』についてのコンセンサスが得られなかったということがありました。例えば、数学の教師は方程式を身に付けさせるべきだと考え、公民科の教師は現代用語を覚えさせるべきだと主張する。しかし、そうした話し合いの中から、『漢字の読み書きこそが文章読解のための土台であり、すべての教科に通じる基礎学力ではないか』という意見が出てきました。しかも、どの教科の教師でもわかる内容であるため、他教科の指導をするよりも負担が少ない。漢字テストをより効果的に運用することで、新たな取り組みの突破口にしたいと考えました」
 従来の漢字テストは、テストと補習の繰り返しで前向きに取り組もうとする意欲を喚起するには不十分だった。改善に当たり意識したのは、単に漢字力を付けるだけではなく、生徒の達成感を高めるような取り組みにすることだった。
 そこで導入したのが、進級方式だ。漢字テストに2〜5級の等級を設け、合格すると上の級に進級するスタイルに改めた。テストは年10〜15回で、テキストの各級の範囲を細分化し、それぞれの範囲について5パターンの問題を用意。いずれか一つに合格すれば、次にステップアップする。
 更に、生徒が自分の成長を把握できるように「校内漢字力進級表」()を用意した。縦軸を級、横軸をテストの回とし、合格すると当該箇所に印を付ける。進級ごとに認定書を発行し、成績上位者は年度末に全校生徒の前で表彰する。上池恭廣教頭は、次のように述べる。
 「本校の生徒の中には、小中学校時代にあまり手をかけてもらえず、劣等感を抱いたまま入学してくる者もいます。いかに劣等感を取り除き、自信を持たせてやれるかが、本校の使命の一つです。目標を設定し、それを克服するという小さな成功体験を積み重ねることによって、人生を積極的に生きていこうとする意欲を育んでほしいと思っています」
図:校内漢字力進級表

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