指導変革の軌跡 山形県立鶴岡南高校「生徒の主体性の育成」

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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数学の補助教材で難関大への意欲を高める

 同学年では、数学を核とした難関大受験への意識付けも、早期から積極的に行ってきた。ユニークな取り組みは「採点者にラブレターを書こう」だ。東京大や医学部などの過去問のプリントを配布し、解答を募る。難関大の入試問題も低学年での学習内容で解けることを伝え、自信を付けさせることが目的だ。
 数学に自信のある生徒、問題に興味のある生徒がプリントに解答を書き、職員室前のポストに投函する。友人と一緒に考える者や、ペンネームで投稿する者などさまざまだ。他学年にも関心を持ってもらいたいという思いから、同じ課題を拡大コピーして職員室前に張り出しておく。続いて、問題発表の翌週に解答プリント(図2)を配布し、同時に次の課題も提示する。解答プリントでは、生徒から寄せられた良い解答やユニークな解答を紹介。不正解でも考え方が良い解答は積極的に紹介し、チャレンジした生徒が達成感を感じられるように配慮している。
 「本校では数学III・Cを終えるのが8月です。9月には演習が始まりますが、その頃には物理や化学の対策も始まり、数学ばかりに手が掛けられない状態になります。そうなる前に、先取り学習のようなことが出来ないかと考えました。『ラブレター』と名付けたのは、生徒を楽しませながらその気にさせると共に、丁寧に問題に向かわせたいという思いがあったからです」(難波先生)
 1年次には同様の趣旨で「数学愛好会」を、2年次ではそれを発展させた「S1学習会()」を立ち上げ、補習を行っている。生徒同士で数学を教え合う光景が見られるようになったため、現在では学年のけん引役となるトップ集団を形成する取り組みへと昇華させている。
 そして、いよいよ同学年も3年生となる。生徒同様、教師にとっても正念場だ。佐藤恵美先生は、次のように決意を述べる。
 「3年次を迎えるに当たり、自分には何が必要かという現状認識と、そのために何をすべきか、という見通しを持つことが重要になってきます。2年間の取り組みを土台にして、3年次ではより自分を律して受験勉強に挑んでいける力を付けさせたい。生徒が真の自立した学習者になるために、担任としてどのような支援が必要か、これからも勉強を積み重ねていきたいと思います」

図2 「採点者にラブレターを書こう」解答プリント

図2 「採点者にラブレターを書こう」解答プリント
*難関大志望の生徒たちを集めた学習会を、「S1を目指してほしい」という思いを込めて命名。
「S1」とは、スタディサポートの学習到達ゾーンのトップ層のこと

*今回のテーマに関連する過去の記事:

→ 2008年9月号

特集「自立する高校生をどう育てるのか―実践編」


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