座談会 中学校内容の「学び直し」の課題と実践─英語を中心として─
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「5つの小箱」で雑多な情報を整理

谷口 小林先生は、文の構造理解を重視した指導を実践されていると伺っています。
小林 本校では学校設定科目として、独自教材を使った「ベーシックイングリッシュ」という授業を1学年で週2時間実施しています。先ほど、生徒の知識はゼロではなく、断片的に残っているという話をしました。私の方法では、これらの雑多な知識を整理して、文の構造を理解させることが中心になります。
 文章の要素である、(1)副詞、(2)主語、(3)述語、(4)目的語・補語、(5)副詞の5つを、それぞれ「箱」に入れて整理することで英文を完成させます。私はこれを「5つの小箱(ファイブボクシズ)」(図2)と名付けています。我々も雑多なものを整理する時、ファイルにインデックスを付けて保存しますが、それと同じイメージです。
 授業はプリント学習が中心です。プリントの左側には5つの小箱が空欄になっており、「私たちは彼を信じます」「彼らはあなたを助けます」といった簡単な日本語の短文を見ながら、そこに該当する英単語を当てはめていくという学習を繰り返します。
 学び直しというと、中学校の学習内容を繰り返すイメージがありますが、一度つまずいた内容を、もう一度させても生徒は苦痛なだけです。そこで、1学期は一般動詞のみを扱い、be動詞は2学期から、その後に助動詞、完了形、進行形、受身形という具合に、生徒が混乱しないよう学ぶ内容を大幅に入れ替えています。2年次からは、1年生で行った内容でリスニングやオーラルコミュニケーションを行っています。
谷口 英文の構造を視覚的にわかりやすく示すということと、正しい文構造をインプットした上で、プリント上で膨大なアウトプットを行うこと、この2つが先生の実践の特徴のようです。
小林 英文の構造を視覚化する利点は、単語を当てはめるべき場所を、ボックスの位置で覚えておけることです。我々も単語を覚える時、単語帳の右上にあったな、などと思い浮かべることがあったと思います。また、ボックスの位置が決まっていて、課題のスタイルが毎回同じであることも、生徒には安心感を与えるようです。必ずしも楽しい作業ではないと思いますが、まじめに取り組めば、たいていの生徒がテストでこれまで取ったことがないような高い点数を取れるので、何とかついてきてくれています。
図2:小林先生の実践「5つの小箱」の最終形
「5つの小箱」は、10 級の「アルファベット、ローマ字など」からスタートし、 1級の「受身形」まで進む。文型を意識しながら英文に当たることを習慣付ける

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