教育現場の挑戦 [学力向上の取り組み]神奈川県立横浜市立さつきが丘小学校

VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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コミュニケーション能力が授業づくりに生かされる

 コミュニケーション能力を育て、生かす工夫は、国語以外の授業でも行われている。例えば6年生の社会では、貴族社会と武士社会の生活を理解させる過程で「貴族と武士、どちらになりたいか」というテーマでディベート学習を実施(写真2)。二つの班が貴族、武士に分かれてそれぞれの利点を討論し、そのやり取りをほかの班が採点する。
写真
写真2 6年生の社会の授業でのディベートのようす。貴族と武士に分かれて討論し、それをほかの子どもたちが判定する
 見学した授業で行われた2回のディベートのうち、1回目は武士の圧勝、2回目は貴族の圧勝と大きく異なった。子どもたちが「自分はどちらになりたいか」ではなく、ディベート自体をしっかり評価する力がついていることがわかる。
 「以前、縄文と弥生のディベートをやったのが好評だったので今回も実施しました。そのときは資料などを見せながら説明する『ショウ アンド テル』を行った班は一つだけだったのですが、今回は全ての班が採り入れていました。また、今回は、相手の質問をよく聞き、それを受けた主張になるように助言しました」(6年生担任・山本美紀子先生)
 このようにディベート学習が成立するのは、低学年のうちから、全校的な取り組みのなかでコミュニケーション能力をつけてきたからだ。また、事前に国語科の授業でディベートのやり方を扱うなど、全体を見通した計画が効果を上げている。
 また、準備段階で班で話し合い、資料をつくり、ディベートを通して、教科の力も確実につけている。教師の話を聞くだけでは到達しない深い知識を得て、学習意欲を養い、史料をもとに考える力を育てている。
 また、さつきが丘小学校が最近力を入れているのが、体育における実践だ(図3)。

図3
 「体育はコミュニケーション能力とは一見結びつきにくいのですが、友だちの姿を見て、よかったところ、直したほうがいいところを指摘したり、だれかがミスをしたときなどに励ましたり。そうしたかかわりが意欲や技能の改善につながります。子どもたちの実態を見たとき、体育がコミュニケーション能力の育成に効果的と実感できます」(渡辺正彦校長)
 その言葉から感じられるのは、コミュニケーション能力の向上がさまざまな場面で子どもたちの力につながるという実感と自信だ。
 「コミュニケーション能力の育成を進めてきた結果、この学校の子どもたちには、言いたいことを言い合える雰囲気ができてきました。また、教師がお膳立てしなくても、目的意識を持って、それに向かっていく行動力もあります。体育で鉄棒を学習すると、次の休み時間には何人かで声を掛け合って鉄棒に取り組み、教え合う。そんなことが自然発生的にできるのは、教師としてうれしいですよね」(山本先生)
 「子どもたちも教師も、この取り組みを通して思いやりのある仲間づくりが可能になると確信しています。あたたかい家族のような集団のなかで安心して過ごし、自分の力を発揮できるようになってほしいというのが私たちの願いです」(教務主任・中川智子先生)


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