特集 つながる幼小の「学び」 ―幼稚園・保育園から小学校、その接続を考える―

VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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時間割を使用しない学習スタイル

 かけはし学習では、時間割は使用していない。活動内容は、前日に教師が「明日は何がしたい?」と児童に問いかけ、要望を集めて決める。だが、すべてを児童に委ねるわけではない。実際には、年間の学習計画が作成され、教師は児童の反応を確かめながら、学ぶべき方向へと導いているのだ。
  「4年間の実践を通し、どの活動をすれば、どのタイミングで、どのような興味を抱くか把握できました。それに沿って年間計画をつくっていますから、学ぶ内容が偏ることはありません。それでも、あえて子どもたちに問いかけるのは、『自分たちで活動を決めている』という気持ちを抱かせ、主体的に活動させるためです」(安東先生)
  教科書は参考資料として、時々使用する程度。だが、その内容はすべて、いったん分解され、フィールドとステージの中に再構成されている。つまり、1年生に求められる教科学習は、この二つの活動の中に網羅されているのだ。実際、かけはし学習の導入前とあととで、1年生の学力テストの結果を比べると、同等か、もしくは導入後の方が優れた結果が出ているという。
  しかし、次は2年生に進むときに段差が生じることにはならないのか。安東先生は、「それはない」と自信を持って答える。
  「子どもたちは1年生の段階で、遊びや暮らしの中に言葉や数が存在することを知り、それを学ぶことの楽しさにも気づいています。ですから、2年生で最初から『言葉を学ぼう』『数を学ぼう』などと教科学習を始める場合でも、抵抗感なく入っていけるのです」
  更に、取り組みの一環として、教室の環境も工夫している。まず、1年生の教室では多くの授業で机やいすを使用しない。例えば、床にはウレタン製のマットが敷かれ、児童は座卓を取り囲む形で活動を進める(写真1)。これも幼稚園に似た環境だ。
  「1年生を机の前に座らせると、キョロキョロして、落ち着きを失います。これは、みんなが周りにいるかを確かめているのであり、不安の表れだと思われます。幼児は、人に近づきたい、くっつきたいという願望が強いんですね。1年生もそうした性質を強く残しますから、まずは安心感を抱かせるために机を取り払います」(安東先生)

写真
写真1 作文を発表する授業のワンシーン。発表後に質問を求めると、多くの子どもたちが意欲的に挙手をしていた
  これによって子どもの不安感は取り除かれ、自信を持って発言できるようになる。
  更に、教室の環境は、活動によって大きく変わる。水槽の観察などは座卓を取り囲む形で進める。造形活動の際は座卓も取り払い、マットのみの動きやすい環境にする。一方、計算問題などは、集中させるために机に向かって取り組ませる。このほか、ときには教室を飛び出し、校庭にテントを張ることもあり、活動の場はさまざまだ。
  活動の時間枠も非常に柔軟だ。活動の内容によって、15〜100分程度の間で教師が自由に調整できるようにしている。
  「1年生でも、生活との一体感があるなど関心の強いテーマであれば、60分でも120分でも集中して行えます。一方、興味を持ちにくい内容は15〜20分が限度。子どもの様子を見て、時間を調整しながら進めています」(安東先生)


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