教育現場の挑戦 「個」を育てる授業づくり
富山県
富山市立堀川小学校

1873(明治6)年開校。県内外から多数の人が訪れる「教育研究実践発表会」は2006年度で77回目。研究成果をまとめた冊子も発行し、06年度の『子どもの学びと自己形成』(明治図書)は10冊目。

大岩久七

▲校長 大岩久七先生

児童数 634人
学級数 23学級
所在地 〒939-8081
富山市堀川小泉町1-13-10
TEL 076-424-1911
FAX 076-424-1912
URL http://www.tym.
ed.jp/sc114/


VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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[実践事例]

富山県 富山市立堀川小学校

子どもがじっくりと考える授業をすべての教師が実現

実践のポイント
1 授業公開を日常的に行い、教師一人ひとりが自分にしかできない授業を実現する
2 子どもの発言には必ず根拠があるという姿勢で、発言や行動などを基に内面を捉える
3 教師や児童が一人ひとりの発言にじっくり耳を傾けることで、安心して考えを深め、発言できる教室の雰囲気をつくる

授業公開が見学者にとっても研修の場に

 堀川小学校は、研究主題を「個と追究・くらしを創造する子ども・」として、自分の持っているものの見方、考え方、判断の仕方、行動の仕方などをあらゆる場面で存分に発揮できる児童を育てる研究を進めている。その成果は、実際に授業を見ると明らかだ。
  この日、見学をした3年生杉林級の理科「根から探る植物のつくり」という授業では、子どもたちは自分たちで掘って集めたさまざまな植物の根を見ながら、次のような意見を交わしていた(写真1)。
  「同じもじゃもじゃの根でも、よく見ると仲間分けできそう」
  「すぐに切れて、採りにくい根があった」
  「長い根と短い根があるよ」
  「同じ種類の植物でも、根は1本1本違う」
  これらの発言を教師が丁寧に拾い上げる形で授業は進められ、子どもたち一人ひとりが自分なりの考えを深めていく。
写真1
写真1 3年生杉林級の理科の授業。子どもは自分たちで採取した植物の根を見ながら意見を出す。そして、教師はそれらを板書しながら整理する
  この授業に限らず、堀川小学校ではどのクラスでも、児童の発言を中心とした同様の授業が行われている。授業をよく観察すると、多くの授業に共通する特徴があった。例えば、机といすは「コ」の字型に配置され、子どもたちが互いの顔を見ながら発言できるようにしている。また、板書では、教師は子どもの発言をさまざまな色のチョークを使い分けて書き、それらを囲ったり線でつなげたりして意見を整理し、子どもが考えを深められるようにしている。
  これらの授業の手法には「堀川式」ともいえるノウハウがあり、校内研修などを通じて徹底させているのだろうか―。教務主任の藤田喜人先生に聞くと、意外な答えが返ってきた。
  「授業を見学した方は、皆さんそうおっしゃいますが、『堀川式授業』というものはありません。マニュアルがあるように見えるのは、授業を積極的に公開し、教師が互いの実践を見て、良いところはどんどん取り入れているからでしょう」
  堀川小学校では、教師1人当たり年20回は授業を公開している(写真2)。「教育研究実践発表会」「中間授業研究発表会」に向けた準備のほか、県教育委員会指導主事の学校訪問、富山大人間発達科学部の教育実習、県内外からの視察といった機会を捉えて、頻繁に授業を公開している(図1)。もちろん、それらの授業は同僚の教師も参観できる。そのため、良い指導法は自然とほかの教師の目に触れ、「盗まれる」ようになる。こうしたスタイルの長年の積み重ねが、「堀川式授業」と思われる指導法を生み出しているのだ。
  しかし、一見同じに見えても、具体的な手法は教師によって異なる。例えば、板書の方法一つをとっても、藤田先生は子どもの発言を、事実は白、意見は黄、意見の根拠となる経験を緑と色分けし、時間の経過は波線で示しているが、ほかの教師も同じ方法というわけではない。ある教師の手法を参考にして自分の授業を改善することで、教師それぞれが独自の授業を展開しているのだ。
写真2
写真2 職員室に貼り出された「授業公開予定表」。これを見て、教師は自分が参観する授業を決める
図1

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