特集 量から質へ―これからの学びを考える
鹿児島県
鹿児島大学教育学部代用附属
鹿児島市立田上小学校

1876年創設。創立当初に西郷隆盛が揮毫(きごう)した「田上小学」の門札は今も大切に保管されている。親子三代が田上小学校に通った家庭も多い。校区には昔ながらの地域社会があり、学校・保護者・地域が一体になって子どもたちを育てる伝統が受け継がれている。

 

中村洋志

▲校長 中村洋志先生

児童数 577人
学級数 21学級
TEL 099-255-6105
FAX 099-255-6106

所在地
〒890-0034
鹿児島県鹿児島市田上5-12-1
http://keinet.com/
tagamis/


VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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【事例2】

体系化した「しつけ」を通じて自ら学び続ける姿勢を育てる

鹿児島県 鹿児島市立田上(たがみ)小学校

昔ながらの「しつけ」を現代的に体系化して、教育に活用している田上小学校。その狙いは、相手を思いやる心を育て、自ら学び続ける自主性を引き出すことだ。自主的な学びを学習習慣や家庭学習にまで広げる田上小学校の取り組みを紹介する。

自律心や自主性を育てる「しつけ」

 2006年度に創立130周年を迎えた田上小学校。その歴史と共に児童に対する「しつけ」のノウハウを培ってきた。基となっているのは、明治時代以降、日本全国の学校で実践されていた基本的なしつけだと、校長の中村洋志先生は話す。
  「時代と共に薄れてきたしつけが、本校では受け継がれてきました。それを83年に『学習のしつけ』という冊子にまとめたのです」
  『学習のしつけ』は時代の変化に合わせて改訂が重ねられ、03年には一冊の本として出版された(注1)。それを機に田上小学校のしつけは広く知れ渡り、賛同の声と共に「締め付けではないか」「画一的ではないか」といった批判も寄せられたという。それに対し、中村校長はしつけの狙いをこう説明する。
  「しつけは、子どもを画一的にコントロールするためのものではありません。自分を律する力と自主性を育てることが、本校のしつけの目標です。子どもは『自由にやってごらん』と言われても、初めは何をしてよいのかわからないし、集団としてもまとまりません。まずはしつけによって最低限必要な『型』を与え、成長に合わせて徐々に型を外し、自主性を引き出していくのです」
  しつけにはもう一つ大きな狙いがある。それは「思いやり」を育てることだと、教頭の福田裕生先生は話す。
  「他者を意識することが『思いやり』の原点です。例えば、授業中に発言をしたがっている児童に『まずは友だちの意見を聞こうね』と声をかけ、自己中心的な気持ちを抑えさせるようにする。他者を意識させて、集団生活を送る上でのルールを身につけさせることは、学校としての重要な役割だと考えています」
注1:『確かな学力が身に付く 学習のしつけ−小学校各教科・領域別』(2003年・小学館)

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