教師がつながる「授業研究」
神奈川県 横浜市立森の台小学校

神奈川県 横浜市立森の台小学校

2001年、児童数増加により、前身の中山小学校を移転して新設。06年度からワークショップの導入をはじめ、研究授業の充実化を図る。地域住民と共に年3回の「学校づくり懇話会」を実施するなど、開かれた学校運営にも取り組む。

校長●津田忠久先生

児童数●947名

学級数●30学級(うち特別支援学級2学級)

所在地●〒226-0029 神奈川県横浜市緑区森の台13-1

TEL●045-931-2047

FAX●045-934-4289

WEB PAGE●http://www.edu.city.
yokohama.jp/sch/es/morinodai/


津田忠久

▲横浜市立森の台小学校校長

津田忠久
Tsuda Tadahisa
川井伸司

▲横浜市立森の台小学校

川井伸司

Kawai Shinji

主幹教諭
VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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【事例2】

ワークショップの導入で
若手とベテランの理解を深める

神奈川県 横浜市立森の台小学校

2006年度からワークショップ型の校内研修を始めた森の台小学校。その定着に伴い、授業研究は活発になり、指導改善に一層重要な場となった。新たな取り組みはどのような成果をもたらしているのか。

図
Point 1

付箋の活用

若手もベテランも率直に意見を言える環境に

  「教師の授業力向上のためには、授業研究の活性化が欠かせません」
  そう強調する森の台小学校の津田忠久校長は、2006年度の着任後すぐ、授業研究にワークショップ型の研修を取り入れた。森の台小学校の授業研究には2つの課題があった。
  1つは、授業研究が形骸化し、本来の目的である授業改善に結び付いているとは言い難かったことだ。要因には、それまでの授業研究では、1日に3名の教師が授業を行っていたため、事後研修に充てられる時間がそれぞれ約30分と短かったことが挙げられる。短時間では教師の発言は限られ、多様な意見によって議論が深まることはなかった。担当教師に気を遣い、発言者が授業を批判することがなかったことも、形式的な話し合いを抜け出せない要因となっていた。
  2つめの課題は、若手教師が消極的だったことだ。事後研修では、若手教師は遠慮して発言を控えるケースがよく見られた。担当教師がベテラン教師である場合はなおさらだ。
自由な雰囲気の中、ベテランも若手も率直に意見を交わせる授業研究にしたい―。そんな思いから新しい取り組みは始まった。
  津田校長は、05年1月に横浜市で開かれた教育フォーラムで、授業研究にワークショップを取り入れる手法を知った。「まずはやってみよう」と導入を決め、幸いにも、教育フォーラムの講師だった国立教育政策研究所の千々布(ちちぶ)敏弥先生の指導を直接受ける機会に恵まれた。
  森の台小学校の授業研究で重要なアイテムは「付箋」だ。KJ法を応用した流れを簡単に紹介する。
  まず、教師は付箋を手に研究授業を参観し、1枚に一つずつ気づいたことを書く。授業後の研修では、教師は4、5名ずつに分かれ、グループごとに書き込んだ付箋を模造紙に貼る。模造紙には「教師の良さ/課題」「子どもの良さ/課題」と4つのエリアを設けてあり、付箋を該当する場所に貼る(図1)。

図1
類似した内容の付箋をまとめて小見出しをつけ、関連のあるグループは矢印で結んでコメントを添える。課題 に対しては改善策も提示する

  次に、類似の内容の付箋をグループにまとめ、それぞれに小見出しをつける。関連のあるグループは線や矢印で結び、コメントを書く。続けて、課題に対する解決策を話し合い、模造紙に書き込む。ここまでがグループでの作業で、最後に各グループが議論の内容を発表し、外部講師の講評を受けて終了となる。
  06年度はこのワークショップを7回行ったが、「回を重ねるごとに、以前よりも格段に多様な意見が出るようになった」と津田校長は語る。付箋に気づいたことを記入する形式では、つぶやき程度の意見も文字になり、模造紙に貼ることによって「発言」につながるからだ。年度当初のワークショップでは付箋の数は少なく、45分間の授業で1枚しか書けなかった新任教師もいたが、次第に増えて、年度末にはどのグループでも模造紙に貼り切れないほどの数になったという(写真1、2)。これは、ワークショップでさまざまな意見に繰り返し触れるうちに授業を見る観点が増えたからだと、津田校長は分析する。
  「付箋の数が増えたのは、教師や子どもの姿を多角的に見られるようになったからでしょう。それは、自分自身の授業を見直す観点が増えたということにもなるのです」

写真1,2

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