教師がつながる「授業研究」
VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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児童になりきり、実践的な助言をする

 模擬授業ではどのような効果が得られるのか。第一に、教師同士で実践的なアドバイスができると、酒向先生は指摘する。
  「例えば、児童役の教師が『もう一度、説明してもらえますか』と言うことで、『今の説明ではすべての子どもは理解できないかもしれない』というメッセージを伝えられます。教師は子どもの言動を体験として把握していますから、担当教師に対して鋭い問いを投げかけられるのです」
  そうした発言により、担当教師は「ここは直した方がよい」とその場で改善できる。
  第二に、困らせる児童役の教師が、雑談したり立ち歩いたりして授業を乱したときにどう対処するかも、実践的に体験できる。
  「教師全員を前にして模擬授業を行い、それを基に指導案も修正されていますから、授業者は落ち着いて研究授業に臨み、実力を発揮できます。また、1つの授業を各学年の教師が参加してつくり上げることで精度が向上し、教師間の相互理解やコミュニケーションも深まります」(酒向先生)
  このように効果の高い模擬授業だが、どうしても時間がかかるため、年2回、2名の教師しか行うことができない。時間の制約をクリアし、回数を増やしていくことが、今後の課題だという。原田校長は、常に新たな取り組みを模索することの大切さについて、力を込めて語る。
  「日頃の仕事を円滑に進めるために、教師同士の協力や協調を重視するのは大切です。しかし、それだけでは、互いに厳しいことを言える関係が生まれにくいのも事実です。相手に遠慮して丸く収めようとすれば、効果のある研修はできません。よりよい関係を築くためにも、新しい試みを取り入れたいと考えています」
  地道に研究を積み重ねる着実さ、そして新たな一歩を踏み出す大胆さ。そのバランスが質の高い研究を支えているのだろう。


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