教育現場の挑戦 「できるところから」を合言葉に年々広がる小中5校の教科連携

VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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連携の合言葉は「できるところから」

 学力向上フロンティア事業の終了後も、ジョイント5は更なる充実を図っている。その主眼は、各校の取り組みの共有化だ。松ヶ浜小学校の後藤善史先生は、こう強調する。
  「各校が算数・数学と英語に分かれて研究を進めたため、それぞれ焦点が絞れて、成果は上がりましたが、課題意識の差が生まれてしまいました。次の段階として、“財産”の共有化を推し進めています」
  05年度には、亦楽小学校でも、汐見小学校・松ヶ浜小学校が作成したカリキュラムを用い、英語活動を充実させた。06年度からは、七ヶ浜中学校と亦楽小学校が作成した「つなぎの問題」が他校でも使われている。
  「亦楽小学校と七ヶ浜中学校では算数・数学、汐見小学校・松ヶ浜小学校と向洋中学校では英語と、別々に連携会議を開いていましたが、それぞれに他校の教師も参加するようになりました」(後藤先生)
  小学校6年間の英語活動の一層の充実に向けて、06年度には亦楽小学校が高学年、松ヶ浜小学校が中学年、汐見小学校が低学年を担当し、3校共通のカリキュラムとして整備した(図3)。これを07年度に教育委員会に答申し、08年度から実践に移す考えだ。また、体育や音楽、美術などでも小中の連携授業を行うなど、取り組みは確実に広がっている。
  「05年度までは、勢いで進めてきたところがありました。それを06年度に『一度、取り組みを見直そう』という話になり、校長会、教頭会、常任推進委員会がそれぞれ、今までの取り組みを検証し、5本柱を担当する校務分掌を設けるなど、体制も見直しました」(佐藤先生)
  07年度は、国語の連携に着手すると共に、幼稚園・保育園との本格的な連携に向けて動き出している。年を追うごとに取り組みを充実させていく原動力は、どこからわいてくるのか。
  「私たちは『できるところから始めよう』を合言葉にしています。例えば、中学入学時の英語への不安を払拭(ふっしょく)できても、その後、どのように興味・関心を維持していけばよいかという新たな課題が浮上します。それでも、課題が浮かび上がったら、その都度取り組めばよいという前向きな考えを共有しているので、次の課題へと進めるのです」(中澤先生)
  「取り組みのきっかけはトップダウンでしたが、次第に現場からのボトムアップに変化した
ことで、取り組みが活性化しています」(佐藤先生)
  6年間の取り組みの継続によって教師の意識が着実に変わりつつある七ヶ浜町。今後の更なる成果に注目したい。
図3

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