つながる学校と家庭の学び
VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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 宿題というよりも自習の要素の強い「こつぐんノート」だが、ほとんどの子どもが毎日取り組んでいる。しかも、大きな文字を書いてページをとにかく埋めようという姿勢ではなく、どの子どももノートにびっしり書き込んでくる。
 その理由は、「こつぐんノート」のポイント制にある(図4)。「こつぐんノート」は毎日、担任がチェックするが、学年でその基準を設けている。ノートの1ページを無駄なく使い、しかも丁寧になされているものに花丸、その次が三重丸、二重丸、一重丸と、どのように取り組んだかによって評価を変えている。花丸は4ポイント、三重丸は3ポイント、二重丸は2ポイント、一重丸は1ポイントとして、通算ポイントを毎日ノートの上部に書く。5学年担任の多田宏先生は、ポイント制は子どものよい刺激になっていると話す。
 「子どもは返ってきたノートを見て、『やった。これで僕は273ポイント!』などと、友だち同士で言い合ったりしています。よい意味で競い合う場になっているようです」
 内容が優れたノートは、学級通信で紹介する。すると、そのノートの事例を見た子どもが、自分の「こつぐんノート」にも取り入れていく。学級通信を見て、「こつぐんノート」の取り組み方が親子の話題に上ることもあるという。
 ユニークなのは、「こつぐんノートパス券」の発行だ(図4)。通算ポイントが50ポイントになるごとに発行され、1枚のパス券で「こつぐんノート」を1ページパスできる、つまり1日休むことができる。
図4 「こつぐんノート」を続けさせる工夫
● 取り組んだ内容に応じてポイントがたまる
写真
教師はノートのチェック時に、学習内容に応じて「花丸」「三重丸」「二重丸」「一重丸」を付ける。それを「花丸は4ポイント」「三重丸は3ポイント」「二重丸は2ポイント」「一重丸は1ポイント」と得点化。通算ポイントをノート上部に書き込む。「頑張ればポイントが貯まる」と、子どものやる気を引き出せる
● ポイントがたまると「こつぐんノートパス券」がもらえる
こつぐんノートパス券
50ポイントがたまるごとに、「こつぐんノートパス券」が1枚もらえる。このパス券を使えば、「こつぐんノート」を1日休むことができる。子どもにとっての大きな励みとなっているようだ
 「このパス券の制度は、子どもの学習の動機付けに抜群の効果があります。もらってすぐに使いたがる子ばかりになるのではと思うかもしれませんが、面白いことに、パス券を使わずに枚数を集めるのを楽しみにしていたり、枚数を競い合うのを楽しんだりする子どももいます。子どもにとって、このパス券を手に入れることが楽しみとなっているようです」(岩永先生)
 自宅学習の内容は基本的に子ども自身に任せているが、漢字の書き取りばかりが続くなど、内容に偏りが見られたときは、「次は社会に取り組んでみよう」と声をかける。多田先生は、「『来週は算数の小テストをするよ』と予定を伝えて、その教科の自宅学習を促すこともあります」と話す。
 一方、5年生では、国語の教科書の音読など、保護者に一律に協力を求めるような宿題は出さないように配慮しているという。
 「子どもの学習に関心があっても、さまざまな事情で子どもの家庭学習や宿題にまで手をかける余裕がない家庭もあります。そのため宿題は、子どもが自分だけでできることを原則にしています。まずは、どの子どもも家庭学習の習慣が身に付くように指導しています」(多田先生)
 このような一連の働きかけによって、同校の保護者の家庭学習への関心は高まっている。子どもが毎日、家庭学習に取り組んでいる姿を目にすること、「家庭学習のてびき」、「こつぐんプリント」や「こつぐんノート」といったツールで、家庭学習に対する学校の姿勢が明確に示されていることが、それを支えている。さまざまな家庭環境に配慮しながら、学校主導で家庭との連携を図るヒントが、同校の取り組みにあるはずだ。

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