国際シンポジウム2007 高等教育における教員のICT活用による教育力向上に向けて
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セッション1
「諸外国における教員のICT活用による教育力向上に向けての教員への支援に関する取組」より

「新次元におけるICT活用」 池田 輝政(名城大学副学長)
会場風景
2007/10/17、日本科学未来館 みらいCANホールの様子

 私は、モデルとなるティーチング・ティップス(教員の教育力向上のために授業のティップス=秘訣・コツ=をまとめたもの)を使い、自分の授業をリサーチする姿勢をベースに授業を開発し、進化させてきました。しかし、日本には、そもそも自分の授業をリサーチするという発想がない教員が少なくありません。ですからFDではまず、その大切さを教えることが求められます。

 次に大切なのは環境づくりです。ICT活用による取り組みが進んでいる欧米のモデルは、ハイテクノロジーを前提にしたものが多いのですが、日本の教員には私も含めて高度なテクノロジーを使うことに慣れていない者が少なくありません。そこで私は、企業から援助を受け、ローテクノロジーでも使える環境をつくりました。

 こうして取り組みを進めた結果、多くの教員が自分の授業をリサーチし、改善することの価値に気づきました。特に、授業外で勉強している学生の様子が見えるようになったことが、彼らの意識を変えたようです。そのほか、教育に関するジャーナルをつくり、取り組みが形になって残るようにもしています。今後は、ICTを活用して、効率よく時間を使って授業を開発するシステムをつくっていくことを目指しています。


※「Benesse発2010年子どもの教育を考える」池田輝政先生からのビデオメッセージも、あわせてご覧ください。


セッション2
「諸外国の高等教育機関におけるICT活用による教育力向上に向けての教育手法の改善に関する取組」より

「eティーチングシステムとFDテクノロジーとしてのTIESシステム」
 中嶋 航一(帝塚山大学経済学部教授)
会場風景
2007/10/17、日本科学未来館 みらいCANホールの様子

 TIES(タイズ)(外部サイトにリンクしています)とは、大学の垣根を越えて教員や学生が集う、eラーニングによる教育コミュニティです。eラーニングというと、学生側が楽しく学べることばかりに重点が置かれ、教員の動機付けについてはあまり取りざたされません。しかし、日本でFDを受け入れられない教員が多い原因の一つに、参加を強制され、楽しいと感じられないことがあると考えられます。

 そこでTIESでは、「楽しくあればいい」という考えの下、教員が授業のノウハウや秘訣を共有できるよう、サポートをしています。例えば、参加し、公開している授業内容をランキングするようにしたところ、最初は嫌がる声も聞かれましたが、時間とともに慣れ、受け入れられました。ICTを活用するスキルが不足している教員が多いのではないかと心配し、最初はただ授業を録画してアップロードすることだけお願いしていたのですが、自然とさまざまなハードやソフトを使うようになり、スキルが向上していることがうかがえました。また、就職活動などで大学から離れた地にいる学生が、ライブシステムを使って教員とコミュニケーションをとることもできます。

 TIESはオープンなシステムで、大学関係者ならだれでも無料で参加できますから、自由に意見を交わしながら、これからも進化していけばと思っています。


※イベント内容は独立行政法人メディア教育開発センター(NIME)のWebサイトでも公開しております。
BERD第9号「大学教育」も、あわせてご覧ください。

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