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園版 企画室より

明日の保育に活きる園内研修と、そうでない園内研修の分かれ道とは?

2013年09月30日 掲載
「これからの幼児教育」編集長 橋村 美穂子

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 「これからの幼児教育」編集長の橋村 美穂子です。今回の「編集室から」の2回目は、園内研修をテーマに感じたことを書きたいと思います。
 これまで、いくつかの幼稚園、保育所の園内研修を見学する機会がありました。どの園もねらいは「保育者への気づきと学びを促し、保育の改善につなげる」という点で共通していますが、実施形態や雰囲気はさまざまです。その中である2園(A園、B園)の園内研修を取り上げたいと思います。

 A園もB園も若い先生が多い点で共通していますが、A園は園内研修を比較的多くされている園で、若い先生が積極的に意見を出していたのが印象的でした。最後には、一人ひとりが明日からの保育の見通しが立ち、笑顔と充実感の中で研修が終了しました。
 対して、B園は保育をされた先生に対する同僚の先生からの指摘のみで議論が進行し、雰囲気が若干きつく感じられました。保育をされた先生の明日の保育がもっとよくなるように、という気持ちからのコメントだったのかもしれません。しかし、コメントの内容や言葉が特にきつかったわけではなかったのに、私が言われる側の立場だったら落ち込んで、やる気がなくなってしまうかもと感じてしまいました。

 A園とB園の「分かれ道」は何なのでしょうか。形態の違いもありますが、私はそれ以上に「学び合う風土(同僚性)」がキーワードなのではないかと感じています。外部から来て研修の場を1度見ただけなので、本当はB園も学び合う風土にあふれているのかもしれません。しかし、園長先生、保育者の先生同士の信頼関係や、若手の先生も園を支える一人として認められているという雰囲気を私はその場から感じることができませんでした。

弊誌が2013年春号で岡健先生のインタビューを取り上げました。その中にこんな一節があります。

「保育者同士の関係は一朝一夕には変わらない。だけど、日ごろから雰囲気づくりを心がけていれば、必ず学び合う風土は醸成されていくと信じてがんばっていただければと思います」

 「学び合う風土」をどう作っていくか、という記事も以前にご提供したこともありますが、マニュアルにはできるものではなく、その園にあった風土を保育者全員で作り上げていくことが大事だと感じました。でも、それが一番難しいですよね。これまで私がいろいろな園を見てきた経験と自分自身の経験を踏まえて「学び合う風土」づくりに大事だと思うことは2つあります。1つは「園長から信頼されていると感じられること」、もう1つは「園が目指す姿の共有とその姿への共感」です。
 前者は、例えば、若い保育者であっても平等に意見を求められたり、その意見を受け止められ、認められることです。自分が信頼されていないと感じると、どうせ認められないのだから、がんばっても仕方ないという気持ちがわきやすいでしょう。保育で「まずは保育者と子どもの信頼関係を築く」ことが重要とありますが、それとまったく同じで、園長先生との信頼関係の上に、保育者の主体的な行動が生まれてくると思います。
 後者は、例えば、「子どもにこうなってほしいから、うちの園は○○を大事にして保育をしたい」ということが全員で共有され、共感されているということです。いわゆる「園のビジョンの共有」ですが、これが全員で共有・共感されていないと、同僚とつながって保育をよくするのではなく、一人ひとりがバラバラで自分のしたいように保育をしていくことになるかもしれません。逆に目指す姿が共有・共感されると、同じ保育観の中で仕事をしている一体感や安心感が生まれ、ちょっとした雑談の中で子どもの成長を共有するなど、学び合う風土が生まれてくると思います。
 明日の保育に活きる園内研修にするためには、研修中にどういうテーマで議論するかだけでなく、研修前の段階からの保育者同士、園長と保育者のコミュニケーションも重要なキーワードではないでしょうか。

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