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高校向け

コロナ禍の教訓:良循環型の学校経営
関西国際大学客員 教授
神戸山手女子中学校高等学校 校長
平井 正朗

2022.01.06

『VIEW next』高校版2021年8月号の「指導変革の軌跡」(記事はこちら)、
『VIEW next』教育委員会版2021年Vol.3の「特別企画」(記事はこちら)のコーナーにご登場いただきました、平井正朗先生(神戸山手女子中学校高等学校校長、大阪市教育委員会 委員(教育長職務代理者))に、「コロナ禍の教訓」と題し、これからの学校の役割、教師の役割について寄稿いただきました。

 2020年、コロナ禍は世界中を震撼させた。日本では3ヵ月にもわたる長期休校措置という前代未聞の新学期スタート。教育界は、まさに“誰ひとり取り残すことのない″個別最適化された学びや持続可能な社会の創り手の育成を加速せざるを得ない状況となった。対面授業が困難な以上、勤務校においても同時双方向型の遠隔授業が軸。これは、設定された時間にオンラインで教員と生徒が双方向的に授業を進める「同期型オンライン学習」と言われるものである。学ぶ側の課題として、モチベーションの維持と学習習慣の定着、教える側の課題として、機器への習熟、ティーチャーとファシリテーターとしてのバランスという点が浮上した。大学で「学校経営論」を担当する筆者もアシスタントのお世話になっており、その点は痛感している。感染症対策のキーワード“3密回避”の下、最近では教員が準備したオンライン上の資料やビデオに生徒自らアクセスし、自学自習する「非同期型オンライン学習」との組み合わせが主流となっている。勤務校では、パンデミック対策と働き方改革への対応に加え、データを一元管理し、学習管理システムの構築を進めるために、経済産業省の「先端的教育用ソフトウェア導入実証事業」の実証校として産学協働を進めている。

 確かに、AI教材などの進展は到達度に応じたオーダーメイドの学習内容を提供してくれるものの、本質を見極め、既成概念に捉われない着眼点と真の実力を育成するためには非認知能力が不可欠。これは、やる気や粘り強さといった数値で測りにくいもの。そのためには、学習に適した環境づくり、自己効力感を生み出す動機づけ、目的をもった学びを可能にする行動力が必要である。ICT技術がいかに発展しても、それはツールにすぎない。人間は、豊かな感性によってあるべき姿を創造し、どのような社会にもっていくのか最適解を探究し、実践していくことができる。

 教師の役割が生徒づくりとするならば、学校の役割は教師づくり。良循環型の学校経営は、目標の実現に向けて、PDCAサイクルを通して改善をはかり、計画的・組織的な学校づくりを推進していくカリキュラム・マネジメントが機能している。

 2009年度のPISA調査における「必要なときに先生が助けてくれるか」という問いに対し、肯定的な回答をしたフィンランドやフランスが8割前後であるのに対し、日本は約6割。2018年のPISA調査で「生活に満足している」と答えた生徒は、OECD諸国の平均67%に対し、日本は50%となっている。その意味で、学校は知識を習得するだけでなく、幸福な人生を送れるよう支援する場であることを再認識させてくれる。

 よき教師のキーワードに「五者」(学者、医者、役者、易者、芸者)という造語がある。“先生”と呼ばれる以上、一期一会に感謝し、生徒とともに成長する姿勢をもつのが基本。そして、DX化、グローバル化が要請する教科指導を追究する「学者」、安心・安全の下、生徒の心理状態まで見抜き、同時に、不安を取り除ける「医者」でなければならない。生徒理解に始まり、生徒理解に終わると言われる所以だ。また、予測不可能な時代であっても夢を語れる「易者」、同時に、モチベーションを高め、感動を与えられることができる「役者」「芸者」も演じなければならない。学校という舞台は、人づくりという言葉がよく似合うのである。





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