特集 コミュニケーションが生まれる授業づくり
VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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生徒以上に変わった教師の意識

 「協同的な学び」の一環として、吉原東中学校 が異年齢間交流を重視していることも見逃せない。特に郷土芸能である「神楽・太鼓・大龍の舞」を通じた地域社会との交流は、対話のある授業と並んで吉原東中学校 の学びの核になっている。齋藤校長は「授業では同年齢、郷土芸能では異年齢の集団の中での対話力を育みたい」と説明する。
  05年度は地域住民を招いた1泊2日の宿泊教室を実施し、生徒の郷土芸能への理解を深めた。「総合的な学習の時間」では3年生が1年生に郷土芸能を指導する中で異年齢間の交流を深めている(写真2)。
  「中学校は小学校に比べて縦割りの活動が減りますが、中学生も異年齢交流によって得るものは大きい。林間学校も05年度から1、2年合同で行い、2年生に1年生をサポートさせるなど、縦割りの集団ができるよう工夫しました」(齋藤校長)
  これらの取り組みにより、学校は変わり始めている。齋藤校長は、前出のアンケートに見られる学習意欲の高まりに加え、学校全体の雰囲気が変わったことに注目している。
  「以前にも増して、生徒同士の関係が柔らかくなったと感じています。部活でも以前なら上級生が下級生を叱るような場面で、上手にリードする光景が見られるようになり、『教えることを通して自分も学ぶ』という『協同的な学び』の考え方が浸透しているようです」
  変わったのは生徒だけではない。生徒に対する教師の視点が一変したと、荒川先生は自身の思いを交えて語る。
  「典型的な例が授業スタイル。従来は教師の都合を生徒に強いる面があったことは否めません。それが今では、『この生徒は対話に参加しているか』といった視点で一人ひとりの生徒を見つめるようになりました」
  取り組みが進むにつれ、「グループ学習が雑談になってしまうことがある」「教師と生徒が最も一体化できる机の配置をどうするか」など、次の目標も見えてきた。齋藤校長は、「課題もあるが、対話を尊ぶ意識が生徒にも教師にも根付いたのは確か。今後も取り組みを深めたい」と意欲的に語った。

写真2
写真2 郷土芸能を通じた学習では、地域住民が生徒を指導し、更に上級生が下級生に指導するという良い循環が生まれている。練習の成果は体育祭や秋祭りで披露する

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