特集 教員養成システムの論点

潮木 守一
桜美林大学特任教授

潮木 守一


うしおぎ・もりかず
1934年神奈川県生まれ。名古屋大学名誉教授。著書に「世界の大学危機」(中公新書)、「ドイツの大学」「アメリカの大学」(ともに講談社学術文庫)など

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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教員養成システムの論点
―どう育成し、質をどう維持するか―

中教審から教職大学院制度と教員免許更新制の構想が打ち出され、年内に答申が出る見通しである。日本の教員養成システムは大きな転換点に差しかかっている。教職大学院の設置は教員の指導力向上につながるのか、臨床的教育の不足が指摘される教員養成課程をどうするか、免許更新制はどこまで教員の質の向上につながるのかなど、検討すべき課題は多い。様々な提言や取り組み事例の紹介を通して、解決のヒントを探る。

【寄稿】
桜美林大学特任教授
潮木守一

教員の需要推計と供給の在り方

大学は「製造者責任」の自覚を

助手の位置付けに問題

 近年、教員採用数の回復が報じられている。公立小学校教員の採用数は、2000年度には3683人と過去最低の水準にまで落ち込んだが、04年度には1万483人まで回復した(図表1)。公立中学校教員も2673人から4572人まで回復した。

図表

 公立学校教員の採用試験の競争倍率も低下した。公立小学校教員の採用試験の競争倍率は、00年度は12.5倍だったが、04年度には4.8倍に、中学校教員の場合は、17.9倍から11.8倍まで低下した。2倍程度まで落ち込んだ都道府県もある。長年にわたって厳しい競争の壁に阻まれてきた受験生からすれば、前途に光明を見る思いがすることであろう。
 過去に遡ってみると、公立小・中学校の教員採用数がピークに達したのは80年前後で、年間2万人を超えていた。ところがその後、少子化の影響で急速に減少し、00年度にはピーク時の3分の1近くまで落ち込んだ。それが、この5年間で急速に回復したのだ。
 少子化時代が続いているにも関わらず、なぜこれほどまで急激に回復したのか。それは、今後10数年間は定年退職する教員が急増し、教員が大幅に足りなくなるからだ。
 この点についてはすでに7年前から、広島大学の山崎博敏教授が著書「教員採用の過去と未来」(98年、玉川大学出版部)などで指摘していた。


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