誌上セミナー　大学の財政と経営

　人口密度など立地的な制約がある、歴史が浅い、規模が小さい、受験生へのインパクトが弱い、カリキュラムが資格と関連しない、私立で公的支援がない―これらの条件にあてはまる大学は、特に経営が困難な状況にあるといわれます。
　アメリカでも同様に、学生数500人から3000人程度の大学、私立、リベラルアーツ中心などの特性を備えた大学は、大規模有名大学に学生を奪われ、高等教育市場でのシェアを減らしています。その結果、経営が悪化して閉校に追い込まれやすく、それを「炭鉱の中のカナリア」と呼ぶ学者もいます。
　しかし、規模が小さく資産が少なくても、経営努力が実を結んで学生募集に成功し、活力がみなぎっている大学もあります。アメリカの高等教育ジャーナリストのジョージ・ケラーは、近著「大学改革　Transforming A College: The Story of a Little-Known College's Strategic Climb to National Distinction」（The Johns Hopkins University Press　04年）で、ノースカロライナ州のエイロン大学を紹介しています。
　かつてのエイロン大学は、基本財産をほとんど持たず、収入の90％を授業料に頼っていました。このような財政状況は、日本のいくつかの私立大学と似ています。1973年の学生数はわずか1800人で、その90％は地元出身者でした。周りには有名なノースカロライナ大学チャペルヒル校や、授業料がエイロン大学の５分の１のコミュニティカレッジがありました。
　「小さく、魅力に乏しい底辺大学」だったエイロン大学が目覚ましい発展を遂げ、南部の大学ランキング（U.S. News & World Report　95年）の39位にランクイン。03年は８位で、全米を代表する大学といわれるまでになりました。