大学・短大の志願者総数と入学定員が同じになる「大学全入時代」が、目前に迫っている。希望者は誰でも進学できるようになるわけだが、それはあくまで数字の上での話である。
2006年度、高校卒業者に占める大学進学者の割合は41.8%、短大進学者を合わせると49.3%で、過去最高を記録した。だが、この数字の裏には、性別や地域による違いが潜んでいる。希望しても進学できない層や、進学することなど思いもよらない層が、まだまだいるのである。
そこにこそ、各大学がマーケティング戦略の方向性を探る一つの鍵が潜んでいるといえるだろう。本稿では、東京大学大学経営・政策研究センターが実施した「高校生の進路についての調査」(以下、高校生調査)の結果をヒントにしながら、潜在的な進学需要の掘り起こしを視野に入れた学生募集の工夫について考える。
高校生調査は、2005年11月に全国の高校3年生4000人を対象として行われた。「エリア・クォータサンプリング」という手法を用いて、全国からサンプルを集めた。在籍高校を介した調査ではなかなか尋ねることのできない家庭の経済状況にも焦点をあてた点に、特徴がある。2006年3月には決定進路についての追跡調査を実施。現在、高校卒業後1年目の状況を尋ねる第2次追跡調査が進行中である。
以下、特に断りがないデータは、すべて高校生調査の結果に基づく。
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