特集

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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「適応」を目指す教育事例…2

学部混成の「教養セミナー」を通して
コミュニケーション力や学習スキルを養う

長崎大学

長崎大学では、高校までの受動的学習とは異なる大学での能動的学習に学生を適応させるため
全学教育体制を整え、1年次前期に全学必修の「教養セミナー」を導入した。
学部混成型のクラスで、学生が自ら決めたテーマに沿ってレポートをまとめ、プレゼンテーションを行うセミナーで学習スキル向上や学生同士のコミュニケーションの活性化に効果を挙げている。

総合大学の強みを生かした学部混成型の少人数セミナー

 長崎大学は、2002年度に1年次前期の必修科目として「教養セミナー」を導入した。学生も教員も専門分野に関係なく、学部混成クラスとした点が、最大の特色だ。
 教養セミナーは、全学の教養教育の見直しから生まれた。同大学は1997年の教養部廃止以降、責任部局制の下、全学協力体制で教養教育を受け持ち、初年次教育を行ってきた。しかし、全国的な教養部廃止への反省や代替機能を持つ教育センター等の設置の機運、教養教育に関する中教審答申などを背景に、学内で教養教育の見直しの声が高まり、「大学教育機能開発センター」を設置して全学教育体制を整え、その中心科目として教養セミナーを開講した。
 教養セミナーのねらいについて、同センター全学教育研究部門部門長の高橋正克教授は、「本学には法学部や理学部がないため、基礎学問の教員がそろっておらず、教養教育に対する危機感があった。そこで、学部単位で行っていた初年次教育を一括し、総合大学としての利点を生かしながら、学生の『多様なものの見方・考え方』を育成しようと考えた」と話す。
 多様なものの見方・考え方は、多種多様な人間同士が交流することによって養われる。そこで、1クラスに全学の学生を混在させる、学部混成方式を採用した。
 長崎大学の全学教育は、1・2年次で完結する。全学教育と専門教育は曜日で分かれ、教養セミナーは全学教育の日の5時限に設定されている。月・火曜日は教育・薬・水産の3学部混成クラス、水曜日は7学部混成クラス、木・金曜日は医・歯・工・環境科の4学部混成クラスだ。経済学部はキャンパスが離れているため、木・金曜日の5時限に同学部の教員と学生だけのクラスとなる(図1)。

図表

 教養セミナーの定員は1クラス10人。長崎大学の入学定員は約1640人なので、全学で164クラスになる。教員、学生の所属クラスは次のように決まる。まず教養セミナーを担当する教員の担当曜日を決め、そこに各学部の学生を学籍番号順に機械的に振り分ける。1クラス当たりの各学部の人数は、学部の定員数の比率に応じて決まる。
 「一般的には、教員が指導できるテーマを掲げ、学生がテーマを選択するケースが多い。しかし本学の教養セミナーでは、学生と教員が学部の枠を超えて一緒にテーマを考え、クラスを運営する。ここに教養セミナー本来の、転換教育としての趣旨が生かされている」と高橋教授は語る。


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