大学発ブランド商品の中でも代表的な成功例の一つが、近畿大学の「近大マグロ」である。近大マグロは近畿大学水産研究所（熊井英水所長）で養殖されたクロマグロ。従来、体重が300キログラムにも達するクロマグロのような大型魚類では、人工孵化から育った成魚が産んだ卵を再び孵化させることは、難しいとされていた。1970年に水産庁が３年間のプロジェクトを発足し、同大学も参加したが成功には至らなかった。以来、同大学は独自に研究を継続。幾多の困難を乗り越えて、2002年６月、世界で初めてクロマグロの完全養殖を成功させた。
　その後、同大学は2003年２月に水産研究所の養殖魚を販売する（株）アーマリン近大を設立。同社から近大マグロは出荷され、関西の百貨店を中心とした店頭に並ぶ。2007年にはアメリカへの輸出も開始。「Ｋｉｎｄａｉ Ｂｌｕｅ-ｆｉｎ Ｔｕｎａ」として、現地の高級日本料理店に販売されている。韓国などにも販路を広げる考えである。
　同研究所では、クロマグロ以外にも20種近くの魚を養殖。マダイ、シマアジ、イシダイ、トラフグなども業務用として出荷している。中でも、水揚げ量が少なく、高級魚として知られるクエは、1988年に同研究所が日本で初めて人工孵化・飼育を成功させた。
　近年、十分な供給量を確保できるようになったため、2007年秋から同研究所白浜実験場のある和歌山県白浜町の観光協会と提携し、「近大クエ」として町内の旅館などへ提供している。一般消費者向けには、クエの切り身とポン酢をセットにした「近大本くえ鍋セット」もインターネットを通して販売している。