大学全入時代を迎え、大学入試は学生の「質」に関する選抜機能を果たし得なくなるのであろうか。
　一足早くユニバーサル化を迎えたアメリカの各大学が20年間で入試戦略をどう切り替えたかを尋ねた調査によれば、難易度の高い大学で競争選抜の割合が上がり、難易度の低い大学で開放入学の割合が下がった。中堅大学では、入試要件を厳格化することで大学のブランド化アップに成功した大学が生まれ、その成否が中堅大学の勝敗を決定付けたのだ。大学全入時代では、選抜性が薄れるどころか、局所的に激化するのが「未来予想図」と言える。
　一方、入試を厳格化して定員を満たさない選抜は、私学が大半を占める日本では考え難い。そうであれば、入学要件の厳格化とセットで「入学後も継承され、繰り返し挑戦可能なアドミッション・ポリシー」という選択が現実的だ。
　ポイントは、「大学教育を受けるのに必要」と設定された入学基準（スタンダード）を満たさずにすり抜けてきた入学者をどう卒業させるか。
　そのためには、これまでのような新学力観的な情意概念（意欲・関心・態度）に焦点化された抽象的なアドミッション・ポリシーは十分ではない。段階的に入試、進級試験、卒業試験へとつながる具体的なアドミッション・ポリシーが要求されるのだ。それは、おのずと入学要件、進級要件、卒業要件の設定へとつながる。
　つまり、卒業試験で要求される能力に対応して、初歩的・基礎的で、かつ試験可能な内容を測る、入学・進級試験が必要とされ、それが必然的に学士課程教育の効果測定も兼ねることとなる。
　こうした学士課程教育の体系化は、ディプロマ・ポリシーから演繹（えんえき）的にカリキュラム・ポリシーとアドミッション・ポリシーを順次設定する構造となるが、大学教育のスタートとなる具体的で試験可能なアドミッション・ポリシーの「質」が、大学教育のゴールである卒業の「成果」を左右することは間違いない。
　この意味で、測定論（テスト理論）に造詣が深く、政策・制度論にも精通した専門教員をアドミッションセンターにきちんと配置できるか否かに、今後の各大学の命運が懸かっている。