学生総合支援センター修学支援グループ・教育プログラム主担当の森川敏昭主査は「『HiPROSPECTS®』が始まってからまだ２年。成果は未知数で、課題もたくさんある。本学は大規模の総合大学であるため、最初は学部同士の意思統一を図るのが難しかった」と語る。
　学部の特性として育成したい人間像を明確に示すのが難しい学部がある一方、到達目標の設定は学生に対して上限を示すことになるのではないかと危惧（きぐ）する学部もあった。棚橋教授は「まだ全教員が同じ方向を向いているとは言えない。しかし、副学長自ら全学部を回って趣旨を説明するなど、地道な努力を続けている」と話す。
　そのため、月１回、全学部の代表が集まって議論をする「学士課程会議」のほかに、プログラムごとにその担当教員で組織する「プログラム担当教員会」を開催。中心となる教員と担当職員によるミーティングも毎週行い、密なコミュニケーションで、学部同士の意思統一に向けて取り組んでいる。
　少しずつ見えてきた成果もある。
　「オープンキャンパスや大学説明会で『HiPROSPECTS®』について説明をしているが、『大学に入ったらこんなことができるようになる』と明確化されているのは、高校生にとって分かりやすい、という評価をいただいている」と森川主査は言う。
　高校生に「HiPROSPECTS®」を身近に感じてもらえるよう、同大学はカエルをキャラクターとした親しみやすいパンフレットを作製。イラストを用いた分かりやすい構成にしている。ホームページでは、高校生の視点に立った表現を用い、より詳しく説明。興味を持った高校生に過不足なく情報が伝わるよう随所に工夫を凝らしている。
　また、「HiPROSPECTS®」は教員の意識改革にもつながるのではないか、と棚橋教授は期待する。身に付けさせたい能力や技能を育てるための指導方法は、プログラムごとに教員が設定し、まとめている。これにより、教員は今まで以上に自身が担当している授業の位置付けを自覚するようになってきた。また、「プログラム担当教員会」は、それぞれの授業の実施方法を吟味し、改善につなげる場となっている。
　森川主査は「今後は、到達度の評価項目の精度をさらに高めていくこと、副専攻プログラムの充実を図ることが主な課題」と話す。また、プログラム実施後、初めての卒業生を送り出す２年後に向けて、企業への広報にも力を入れていく予定だ。