キャリア教育は大学内では完結できない。実際、諸学問の研究・教育者であっても、キャリア教育に不可欠な臨床心理やキャリア心理、人事労務管理や労働法、労働社会学や労働経済学などに興味がなく、まるで勉強したこともないならば、適切な指導は容易でない。
だから、キャリア教育の専門家を招聘または育成し、同人を核にした教員群がキャリア教育の分担を試みるのが通例となる。また、卒業生や地域の人々の協力により、体験を話してもらったり、共同討議に参加してもらったりして、現場感覚を学生に伝える工夫も要する。
社会が大学に期待することは山ほどあっても、実際に提供できる教育は限られる。キャリア教育一つをとっても、大学にできることと、できないことがある。むしろ、社会を構成する個人、家庭、学校、人的ネットワーク、地域、企業、そのほかの組織、国や自治体などが、それぞれの得意・不得意な部分を補い合い、統合的に連携して、最適な効果を挙げる教育訓練システムを追究すべきだろう。
社会を意識した「学士力」が語られ始めた現在、大学と社会との連携をどうすべきかが、避けて通れない課題となっている。 |