特集

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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CASE1

時代の変化に伴って新解釈を打ち出し
男女共学化、校名変更へと前進

中京女子大学

中京女子大学は、「健全で円満な女性の育成」という建学の精神の下、100年以上にわたり元気な女性の育成に努めてきた。時代に合わせてこれを新解釈し、新たな教育理念を提示。2010年度には「至学館大学」に校名を変更し、男女共学に全面移行する予定だ。

創立年
1905年

建学の精神
健全で円満な女性の育成

教育理念
人間力の形成

男女共同参画社会を築く「英知と創造性」を重視

 女性の自立をめざして、内木玉枝氏が中京女子大学の前身・中京裁縫女学校を設立したのは、1905年のことだ。
 当時は富国強兵の国是の下、頑強な男子は健やかな母を必要とするという考え方が、一般的だった。多くの成人男子が戦争で命を落とし、一家の大黒柱としての女性の存在がクローズアップされた時代でもあった。そうした社会背景では、専門的技能を有する女性の育成が喫緊の課題だった。
 建学以来、中京女子大学は、豊かな教養と職業的な素養を身に付けた良妻賢母の育成に努めてきた。
 1922年には、食事や運動などによる身体的な健全さを掲げ、「家事体操専攻科」を設立。この方向性は、今日も同大学のアイデンティティーとして受け継がれ、レスリングをはじめスポーツ分野における実績に表れている。
 創立から百余年を経て、社会環境や女性の役割は大きく変わった。建学の精神には、「女性らしさ」「女性たるもの」といった旧来の価値観が色濃く反映されている。そのため、性別にとらわれない自由や人間らしさが重んじられる現代の価値観との間に、ずれが生じた。
 谷岡郁子学長は、「社会規範が大きく変わり、先行きも不確実な時代を切り拓(ひら)くうえで必要なのは、一人ひとりが自立と自律を果たし、主体的に社会に参画すること。そこには男女の差はない。そうした社会の変化を受け止め、建学の精神を時代に合った文脈に修正する必要があった」と述べる。
 そこで1995年、「心身ともに健全でたくましく、英知と創造性を持って人生を積極的に生きる人間の育成」という、建学の精神の新たな解釈を打ち出した。
 心身と社会性が健全に発達し、高等教育で身に付けた知性を「英知と創造性」として生かせる人材像を提示。そのような人材こそが、主体性を持って男女共同参画社会を築き上げ得るというビジョンだ。
 次に課題となったのは男女共学化だった。開学以来、行ってきた教育が、男子学生にも通じるという確信が大学にはあった。同じ理念の下で学んだ男子学生が社会に出れば、男女共同参画社会の実現に寄与できるとも考えた。さらに、それまでに養成した保育士や栄養士など、女性の比率が高い分野に男性が進出すれば、社会的地位の底上げになるというねらいもあった。
 こうした考えの下、2007年度から一部の学部で男子学生の受け入れを開始。2010年度には全面的に共学化し、校名も「至学館大学」に変更する予定だ。


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