特別企画

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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高校生の価値観や進路選択の行動が変化

 今後、高大連携の体系化を進め、連続性を担保するためには、何よりも高校での履修状況に配慮した取り組みが重要だ。特に、修学意識や生活態度が未成熟、あるいは学習意欲や社会性が乏しい学生を円滑に大学生活へと移行させるためには、高校での学習状況等の情報の引き継ぎ、初年次教育の充実など、高校との連携をいっそう緊密にする必要がある。実効性ある施策を行うには、高校・大学の双方が管轄部署を明確にして責任を分かち、協働することが求められるだろう。
 こうした高大連携の枠組みをつくる前に、十分考慮しなければいけない点がある。それは高校の実態把握であり、大学として高校生の気質・意識の変化をどのように受け止めるかという視点だ。
 本人の学力、学習行動、在籍する高校の教育施策によって、進路意識や大学選択行動は当然、異なる。高校教員は、今の高校生が「モラトリアム志向」で、「個人的価値観」を優先する者が増え、さらに資格取得志向に代表される「実用志向」があまりにも強くなっていることを懸念している。

高校教員が感じる生徒の価値観の変化
図:高校教員が感じる生徒の価値観の変化

 大学は、こうした高校生の価値観、進路選択行動の実態の変化をふまえ、高大連携を推進すべきだろう。高大連携の方向性は、大学側にとって、その取り組みがどれだけ大学教育へのレディネスの確保に寄与するか、という視点で決定すべきだろう。
そのために、生徒の多様化、進路意識の変化をふまえた高校の進路指導・進路学習(キャリア教育)を十分、意識しなければいけない。
 高大連携の中でも、高校にとって高い教育効果を生む提案は、高校現場に積極的に受け入れられ、進路学習のプログラムに組み込まれる可能性が十分にある。一方で、高校現場の変化に対する理解が十分でない場合や、高校にとっての教育効果に配慮しないものは、支持を得ることは難しい。
 また、「出張講義」「大学教員による実験を伴う授業」「キャリア意識の形成支援プログラム」など、高大連携の内容は多種多様になっている。必ずしも大学での学びに直結し、学習意欲を喚起するとはいえなくても、大学がかかわる内容ならば、高校生にとって現実感のある「大学の情報」として受け止められる。つまり、高大連携における「学び」の機会は、入学後の自分の姿をイメージする手助けとなり、「誘引装置」になる。高校にとって、生徒の学習意欲を高める高大連携は歓迎すべきものであり、高校生が自らの適性や能力を考慮して行う主体的な大学選択につながっていくはずだ。


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