特集

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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CASE2

大学と福祉の現場を橋渡しする
卒業生中心の学内学会


日本福祉大学

◎学内学会「日本福祉大学社会福祉学会」や災害時の活動を通して、卒業生とのつながりを深めてきた日本福祉大学。背景には、福祉のプロを送り出し、継続的な学びを支援することによって、地域社会に貢献したいという考えがある。

教育内容を見直すため 現場の情報を収集

 1953年の開学以来、日本福祉大学の卒業生約6万2000人の多くは、全国で社会福祉業務に携わっている。大学が卒業後も学びを支援すれば、活躍の幅は広がり、結果として地域社会に一層貢献できる。長期的に見ると、それが大学のブランド力の向上につながるはずだ。
 社会福祉制度は年々変化している。そのため、大学は、制度変更に対応した現場の実情を反映させて、教育内容を見直す必要に迫られている。卒業生を組織化すれば、全国の福祉の現場からスピーディーに情報が集められる。
 卒業生の継続的な学びにおけるこうした点に着目して、1963年、大学と同窓会、学生自治会の共同による研究交流組織「社会福祉研究会」を発足させた。1968年、この組織が学内学会「日本福祉大学社会福祉学会」に発展した。主な活動は、年1回の研究大会の開催と、年1、2回の学会誌『福祉研究』の発行だ。会員は卒業生を中心に学生や教職員など約500人を数える。
 大会では、主に卒業生が現場経験に基づく研究発表を行う。アカデミックな研究から現場レポートまで内容はさまざまだ。学生が学内で表彰されたゼミ論文を発表することもある。
 大会出席者は毎回200〜300人で、そのうち約100人は学生だ。事前にポスターやチラシで告知しており、学会員以外の自主的な出席者のほか、授業の一環として学生に聴講させる教員もいる。2009年6月に第41回大会が開催された。
 社会福祉学部長で、学会運営委員長を務める木戸利秋教授は、「発表者の年齢や職種はさまざま。大学での学びが仕事につながることを学生が実感し、自分の将来像を具体的にイメージするにはぴったりの機会だ」と語る。発表者にとっては自分が直面している課題について議論を深め、助言を受けるという学びにつながる。

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日本福祉大学社会福祉学会を通した卒業生との交流は、学生にとって、福祉のプロをめざすうえでのモチベーションアップにもつながっている。

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