特集

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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調査結果から読み解く

人材の育成と評価をめぐる
大学・企業の課題


ベネッセ教育研究開発センターが実施した3つの調査の結果から、
人材の育成と評価にかかわる大学・企業の課題について把握し、
大学教育と社会との円滑な接続のための、双方の対話の方向性を探る。

企業の約6割が「潜在能力」を重視

 「平成22年度学校基本調査(速報)」によると、大卒の就職者総数は32万9000人で、前年より5万4000人減少した。就職率(卒業者数のうち就職者総数の占める比率)は60.8%。前年より7.6ポイントの低下で過去最大の下げ幅となった。
 リーマン・ショック後、企業の急激な採用減の影響で、就職戦線は厳しい状況にある。採用する企業側も、学生を送り出す大学側も、人材の育成や評価に対して、その中身や方法がより一層問われ、互いに課題や問題を抱えている。
 2008年9月に4000社の採用担当責任者を対象に実施した「社員採用時の学力評価に関する調査」(企業調査)から、企業側の視点を考察する。

図表1:大学新卒者の採用時に重視すること[企業調査]

 図表1は、大卒採用の際、学生の潜在能力を重視するか、それとも即戦力を重視するかを聞いた結果である。「潜在能力重視」(「潜在能力を重視」「やや潜在能力を重視」「どちらかといえば潜在能力を重視」)と回答したのは、全体で59.4%。約6割の企業は学生の潜在能力を重視した採用を行っている。
 この傾向は、従業員規模の大きい企業であるほど強く(「1000人以上」74.3%>「500人以上999人以下」55.8%>「499人以下」50.3%)、また、非上場企業より上場企業の方が強い(「上場」80.8%>「非上場」55.8%)。
 サンプル数が少ないため参考値ではあるが、産業別では、建設業が83.9%と最も高く、医療・福祉が30.4%と最も低い。国家資格取得者を採用し、直後から専門的業務に従事させることが多い医療・福祉業界では、潜在能力より即戦力が必要とされている。
 企業が採用時に重視するのは、学生が「今、何ができるのか」よりも、「この先、何ができそうか」であると解釈できる。これからの組織の中核を担う人材を、中長期的な視野で育成していくことを念頭に、採用していると考えられる。
 ただ、この調査の実施直後から経済情勢は急速に悪化し、企業は採用を絞り込んでいる。そのため、即戦力を重視する度合いはある程度増している可能性もある。


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