大学は、「何を教えるか」ではなく、「何ができるようにするか」を問われるようになった。このラーニングアウトカムの設定にあたっては、地域社会や産業界がどのような知識・能力を求めているか把握する必要がある。さらに、一人ひとりの学生を確実にそのアウトカムに導くうえで、教育プログラムの内容や教育手法というプロセス部分にも、地域、産業界の視点を取り入れることが有効といえる。
こうした発想から、産業界との協同によってカリキュラムを編成したり、企業人に授業の講師を務めてもらったりという取り組みが、大学の間で広がっている。社会に人材を送り出すという大学の使命を考えれば、大学人の発想を超えた大学教育の設計・実践は、必然といえよう。
大学は、地域、産業界にとっての人材育成・供給の拠点という自らのポジションをいま一度認識すべきだ。地域、産業界の発想や知恵のコーディネートによる新たな教育の創造こそが、大学の新しい役割ではないだろうか。企業、行政、市民グループなど、多様な人々に協力を呼び掛けて、それぞれの現場の課題、それを解決し得る人材像についてオープンに議論することが重要だ。大学には、多くの「現場のプロ」の議論から問題の本質をとらえ、「人材育成のプロ」の感度、見識によって最適解となる教育プログラムを導き出す力量が求められる。
こうしたスタイルによる教育プログラムの構築を、すでに確立された学部・学科で取り入れるには、難しい点も多いだろう。教員の抵抗は容易に想像される。であれば、新増設を機にこのスタイルを取り入れ、全く新しい学部・学科をつくってはどうだろうか。実際、ある大学では、学部の改組に合わせて産業界の人材を最大限活用し、就業力強化を重視した教育プログラムを検討。学生募集における競争力につなげようとしている。 |