真のリーダー育成を目指して 盛岡第一高校の考える人材育成

専門性と教養を合わせ持つ人をもっと育てよ
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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「グッド・ミックス」社会で活躍するリーダーが必要

――子どもの環境を整えるには、保護者や教師の意識が大切です。

  私たちの精神背景となっている文化が多様であることを、もっと認識すべきでしょう。文化は非常に複雑なものですが、重要な要素は「科学」「論理」「情緒」「言語」の四つです。この順で多様性は増していきます。「科学」には国籍も国境もなく、宇宙に一つの大原理、真実を追究します。「論理」は高い普遍性を持ちますが、それでも日本の論理、アメリカの論理、イスラムの論理は違います。「情緒」はもっと異なり、更に「言語」は数千種類あると言われるほど、極めて多様です。この四つが相まって「文化」ができ、それが多様であるから、世の中は大変豊かなのです。
  国内外を問わず、世の中が多様であると認識できれば、競争ばかりをあおっている教育も変わっていくかも知れません。オリンピックや入試のように、競争は同じルール、同じ単位で比べる必要があります。だから、それだけを追い求めると世の中や人の考え方が画一的になってしまいます。大学生を見ていると、高校時代に大学入試に出題されるものしか勉強してこなかったように見えます。将来、リーダーになるかも知れない若者たちこそ、もっともっと教養を身に付けるべきなのに、不毛の競争で「知」が細ってしまうのです。

――知が細くなることで、社会全体が脆弱になると言えるのでしょうか。


  社会全体が画一的な「知」しか持たなければ、少し違う方向から風が吹いただけであっという間に飛ばされてしまいます。そうならないために、さまざまな特徴を持つ人が集まった「グッド・ミックス」である社会をつくらねばなりません。世界を見渡しても、文化の違う国が互いを尊敬し合いながら存在するところに妙味、醍醐味、面白味があるわけです。どこへ行っても同じマニュアルのチェーン店では面白くありません。
  科学研究も同じです。リーダー、研究者、更にその人たちを支えるスタッフが、同じ「知」しか持っていなければ、研究は成り立ちません。例えば、映画は主演男優や主演女優だけでは面白くも何ともない。名脇役も必要です。大道具、照明など、さまざまな人たちが関わり、名作が作り上げられるのです。そして、それを楽しむ観客がいなければ評価されません。これらを俯瞰的に見て、多様な価値観を理解した上で全体を組織化するのが名監督、優れたリーダーなのです。つまり、これからのリーダーに求められるのは、さまざまな価値観や能力、機能を持った多様な人材を受容し、認め、まとめていくことです。そして初めて組織としての力を高められると言えます。


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