変わり始めた高校の英語教育

金谷憲

▲東京学芸大学教授

金谷憲

Kanatani Ken
中教審外国語専門部会委員。SELHi企画評価会議協力者。関東甲信越英語教育学会会長、全国英語教育学会会長。専門は英語教育学。

吉田研作

▲上智大学教授

吉田研作

Yoshida Kensaku
中教審外国語専門部会委員。SELHi企画評価会議協力者。文部科学省「英語が使える日本人」育成研究グループリーダー。専門は応用言語学。

金森強

▲愛媛大学教授

金森強

Kanamori Tsuyoshi
愛媛大英語教育センター教授。中教審外国語専門部会委員。SELHi企画評価会議協力者。日本児童英語教育学会副会長。専門は英語教育、音声学。

松本茂

▲東海大学教授

松本茂

Matsumoto Shigeru
中教審外国語専門部会委員。SELHi企画評価会議協力者。東海大では14の付属高校の教員研修を担当。専門はコミュニケーション教育学。

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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SELHi座談会
変わり始めた高校の英語教育
―SELHi事業の成果と課題

SELHiは日本の英語教育にどのような影響を与えているのか。そして、この事業から浮かび上がった課題とは何か。SELHi事業の立ち上げと各校での研究にさまざまな形で関わり、サポートを続ける4人の専門家が語る。

a round-table talk on SELHi
セルハイ校に見る取り組みの成果

「良き外圧」としてダイナミックな授業変革をもたらしつつある

金森 まず、セルハイに取り組むことで、先生自身が意欲的になったという高校がたくさんありました。そして、先生が意欲的になったことで、生徒たちも今まで以上に授業に集中し、積極的に参加していることが感じられました。まさに、先生方の日々の授業、教材研究における努力が、生徒たちにも良い影響を与えているのだと思います。
吉田 多くの先生が、セルハイ導入時は授業の進め方も「これでいいのか?」と手探り状態でした。しかし、今では先生方も何をやればよいかが分かってきて、積極的に授業プログラムを開発・実施している高校も多く見られます。
松本 従来の英語教育を変える動きとしては、セルハイは十分に評価できますよね。英語教育に対して、教師が個人プレーではなく集団として取り組むようになったり、英語を使って英語を教えるようになったりするなど、次々と新しい動きがセルハイによって起こりましたから。
金谷 そうですね。セルハイは日本の高校の英語教育をダイナミックに変える、言わば「良き外圧」でしょう。教育に限らず、日本の組織というものは外からの圧力がないとなかなか変わりにくいですよね。私は、日頃から、日本の高校の英語教育の最大の問題は「同僚問題」であると思っています。例えば、定期テスト一つとっても進度や内容など同僚と足並みを揃えないといけません。つまり、自分一人が新しい取り組みに挑戦しにくく、せっかくの意欲が形となって実現しづらいわけです。ですから、セルハイの導入は、教師集団が一気に変革する上で、とても良い機会になったと思います。
金森 自分なりの指導理論が確立されているベテランの先生ほど、新しい取り組みに挑戦するのは大変なことですよね。それでも、セルハイ指定という機会を前向きに捉えて、取り組んでいる先生が多くいらっしゃいました。私は、とても素晴らしいことだと思います。
吉田 生徒の英語力にも良い成果が表れています。GTEC(※1)を活用したセルハイ校での調査からも、セルハイの取り組みが生徒の英語力向上に一定の成果を上げ、生徒も英語に対して自信を持つようになったことが明らかになっています。セルハイ校の卒業生からは「大学よりも高校の授業の方が面白かった」という声も多く聞かれるほどですからね。
※1)ベネッセコーポレーションの英語コミュニケーション能力テスト。

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