中学校の現場から 生徒の人間関係


愛知県 豊橋市立本郷中学校

愛知県東部、静岡県に接する豊橋市は人口約38万人。1986年に開校した同校は市の南部に位置する。 校区を占めるのは新興住宅街が中心。周囲には水田が広がり、恵まれた環境に包まれている。

生徒数 ● 519名
学級数 ● 14学級

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実践事例
愛知県豊橋市立本郷中学校

教育カウンセリングの手法を用いてコミュニケーション力を育む

エクササイズを活用し互いに認め合う土壌を耕す

 本郷中学校は、生徒の人間関係を育む活動として、教育カウンセリング理論をベースにした「構成的グループ・エンカウンター(SGE)」を取り入れている。これは、お互いにコミュニケーションせざるをえない時間、空間、グループを意図的に設定する手法だ。生徒が話し合ったり、相手の良いところを指摘し合ったりする集団学習体験(エクササイズ)を通して、自己肯定感を高めると共に、相手を思いやる気持ちを育んでいく。
 「一般にカウンセリングというと、一対一の治療的なイメージがあると思います。一方、教育カウンセリングは、グループアプローチによる『育てる』カウンセリングです」(校務主任・柴田祥宏先生/日本教育カウンセラー協会所属・上級教育カウンセラー)
 カウンセリングをするといっても、特別な訓練や資格は必要ない。教育技術の一つとしてある程度マニュアル化されているため()、初めて行うという教師でもスムーズに実践できるのが特徴だ。

図

 同校でも、校内研修を通して教師全員がノウハウを身につけ、ホームルームや道徳の時間、帰りの会など、さまざまな時間を利用して実施している。お互いの良いところを指摘し合うもの、ヒントを出し合いながら絵や地図を描くような共同作業、協力しながら進めていくゲームなどのエクササイズがある。
 例えば、友だちに「おはようございます」と挨拶されたとき、次の(1)〜(4)の順番で返事をするというエクササイズがある。

(1)無視する
(2)素っ気なく返す「あ、おはよ」
(3)普通に返す「おはようございます」
(4)プラスして返す「おはようございます。今日はいい笑顔ですね!」


 エクササイズのあとには、「シェアリング」という、お互いの「思い」を分かち合う場面を設定する。「無視するのってキツイよね」「挨拶に言葉をプラスして返すのは気分がよかった」など、意見を交わす。「挨拶しなさい」と教師が言って強制的にさせるのではなく、エクササイズという設定された場を通して、生徒は挨拶やコミュニケーションの大切さを体感し、自発的に挨拶をするようになっていく。
 「昔ながらの教育手法でも同じようなことができますが、教育カウンセリングの理論を使った方が、生徒は早く理解できます」(柴田先生)
 同校では、エクササイズの年間計画を作成。新入生を対象とした2泊3日の「野外教育活動」に始まり、各学年の年度初めや学校行事のあとなど、機会を逃さず効果的なエクササイズを組み入れ、生徒のコミュニケーション力を育てている。


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