特集 生徒を大人にする「生徒指導」
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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ゼロ・トレランスを前提に厳格で徹底した指導

 同校の生徒指導の土台は、前述の「西農三訓」だ。「時間厳守」については、「ゼロ・トレランス(不寛容)」を前提として、遅刻は一つとして例外を認めない厳格な態度で臨む。そのため、病気などの正当な理由を除いて、遅刻は年間を通してゼロ。授業では常に10分前行動、5分前点呼を心がけ、ベルと同時に礼をして授業が始まる。
 「挨拶励行」では、校門や廊下での挨拶はもちろん、職員室や準備室への入室時には、必ず氏名と用件を大きな声で告げさせる。退室時にも必ず一言挨拶し、一礼して退出するよう習慣付けている。「整理整頓」では、25万平方メートルという広大な校地を区切り、全校生徒で毎日必ず清掃・点検を実施。教職員も出向いて厳しくチェックしている。
 生徒指導主事の小迫孝太郎先生は、「遅刻にせよ服装にせよ、特別な指導をしているわけでも、他校に比べて校則が厳しいわけでもありません。本校はそれを徹底して行っているだけです。見て見ぬふりをせず、必ず守らせ、最後までやらせる。これを繰り返すことが大切」と強調する。
 「西農三訓」を徹底的にたたき込まれる最初の場が、入学直後に行う3泊4日の合宿研修だ(図1)。全体指導やLHR、オリエンテーション、カッター訓練などを通して、生徒は規律ある生活習慣や高校生らしい態度を徹底的に仕込まれる。

図1

 合宿研修で生徒は班ごとに「カッター係」「オリエンテーリング係」などの係が割り当てられ、自分の役割を把握しておくだけでも一苦労だ。しかも、スケジュールは分刻みで進行する。少しでも時間に遅れれば、激しい叱責を受けるとあって、生徒は予定がびっしり書き込まれたノートを見ながら、施設と施設の間を走りながら移動していく。
 「生徒に対して、ときにはあえて理不尽とも思えるような注文をつけることもあります。シーツにちょっとしたシワを見つければ、最初からすべてやり直し。入浴時は風呂場の前で待ち構え、タオルを首にぶら下げて出てきた生徒を厳しく叱責する。どんな小さなことでも規律正しい姿勢を身につけさせることが大切なのです」と、中野先生は話す。

図1
写真1  合宿研修でのカッター訓練の様子。カッター訓練では女子を男子がフォローしたり、他クラスの校歌斉唱に別のクラスの生徒が声を合わせたり、数日前までは顔も知らなかった生徒同士が、厳しい指導を受ける中で次第に連帯感を醸成していく。

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