特集 「自立する高校生」をどう育てるのか
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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グループ学習で学ぶ意欲を喚起

 「安西高校進化論」の柱の一つは、生徒同士の学び合いを促すグループ学習だ。取り組みの理論的支柱となっているのは、東京大大学院の佐藤学教授が提唱する「学びの共同体」である。生徒同士の学び合いにより、学ぶ意欲を喚起すると共に、一人ひとりの学習を保障することがねらいだ。進路指導主事の三堂(みどう)和生先生は、従来の一斉授業との違いを次のように説明する。
 「一斉授業は、ともすれば教師の一方通行になりがちです。生徒への個別対応が難しく、生徒の理解度を確認したり、生徒が自分の考えを表現したりする機会が少ない。一方、グループ学習は、教師が生徒の理解度を確認しながら授業を進められ、生徒は仲間の表情を感じ合えるために、温かい雰囲気を生み出せます」
 一見して、従来の授業と異なるのは教室内の机の配置だ。黒板の前に教卓はなく、机は「コの字型」に並べられ、必要に応じて4人1組のグループをつくる(図2)。教卓がないのは、教師と生徒の仕切りを取り払い、教師が教室の中央に出やすくするため。机をコの字型に並べるのは、生徒同士が互いの表情を確かめ合うことで一体感が生まれやすいからだ。
図2
 グループ学習の方法は授業の内容や教科によって異なるが、教務主任の川口達也先生は「1回の授業で2〜3回行うようにしています」と言う。グループは基本的に4人1組で、男女が交互になるように席順が考えられている。男女を市松模様に配置することによって、グループ内の話し合いや共同作業が一層活性化するという。
 2学年主任の田中真二先生は、「普段は話す機会の少ない生徒同士でも、向き合うことによって適度な緊張感が生まれ、だれとでもコミュニケーションできる力を養うことができます」と説明する。
 こうした仕組みは、生徒の積極的な授業への参加を促す工夫に見える。ただ、ねらいはそれだけではない。グループ活動を取り入れたもう一つの目的は、生徒一人ひとりが学びに参加せざるをえない状況をつくることにある。4人1組の話し合いでは、だれもが発言する機会が自ずと生まれる。半ば強制的に学びに向かわせる仕掛けが埋め込まれているのだ。

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