特集 つなぐ教師の教科指導力
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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他教科・他学年とのつながりが着実に深まる

 教師のノウハウや指導の工夫を共有する上でも、模試分析会の役割は大きい。例えば英語科では、担当者が模試を分析したあと、模試分析会前に分析内容や今後の方策を学年の教科全員で話し合う。その際にベテラン教師が発するアドバイスが、若手教師の指導の参考になっている。
 橋本先生は、教師同士が「つながる場」としての模試分析会の意義を強調する。
 「本校には、独自教材をつくるのが上手な教師が多くいます。日々、職員室や印刷室で教材づくりに力を入れている姿を見ればわかるのですが、そうした先生方の模試分析会での詳細なデータを見ると、確実に結果を残していることに気づきます。こうしたことは、回覧された過年度比較などのデータを漠然と見るだけではわかりません。他教科の取り組みが見えてくれば、職員室や控え室などで話題にしたり、教材やプリントを見せてもらったりするきっかけにもなります。他教科とつながることで、教師の意識が高まると共に、ノウハウも波及していく。それが、模試分析会の最大のメリットではないでしょうか」
 他学年の模試分析会への参加は自由であり、進路指導部以外の教師も実際に参加している。他学年の生活指導も含めた指導の過程を知る場になると共に、自学年の生徒をより客観的に見られるようになり、生徒の傾向や課題に改めて気づくことがあるという。長谷部先生自身、模試分析会で1、2年生の教師の「言葉」を改めて聞き、多面的な見方や考え方に気づく契機となった。
 「臨時の進路講演や模試、進路ニュース特別号の発行、東京大・京都大志望者を集めた会などは、年度当初の計画を変更して実施した行事です。模試分析会によってそれぞれの学年とのかかわり方が今までと違ったものになり、それまでは考えなかった取り組みができました」 
 今後の課題は、中心となる教師が担任などに偏らないようにすることだ。担任を持たない教師や受験科目以外の教師の積極的な参加を期待するという。
 「本校には伝統的に『生徒に評価されてなんぼだ』という気概が水面下にあると思います。ですから、個々の教師が個人個人を奮い立たせて、常に生徒のために頑張ることができるのでしょう。模試分析会を通して、ほかの教科やクラスに負けられないという気持ちや良い授業をしようという気持ちが、教師同士が切磋琢磨する環境をつくっている。そこには、特別なシステムなど存在しないと思うのです」(木嶋先生)

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