特集)新課程を機に現行課程を振り返る
木村篤志

▲兵庫県立小野高校

木村篤志

Kimura Atsushi
教職歴27年。同校に赴任して17年目。3学年主任。「明るく、へこたれず、自ら考える」がモットー。

後藤司

▲兵庫県立小野高校

後藤司

Goto Tsukasa
教職歴27年。同校に赴任して12年目。2学年主任。大切にしている言葉は、「玉磨かざれば光なし」。

辻祐子

▲兵庫県立小野高校

辻祐子

Tsuji Yuko
教職歴26年。同校に赴任して10年目。3学年担任。「Where there's a will, there's a way.」

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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多様な仕掛けによって自ら学び考える力を育成

 このように、授業のみならず、学校行事や特別活動にも力を注ぐ小野高校だが、教師は「個々の実践を単発の取り組みで終わらせていては駄目。個別の活動を効果的に結び付けながら、生徒の『生きる力』や『自ら学び考える力』を育んでいくことを、常に意識しながら指導に当たっている」と、口をそろえて話す。
 例えば、進路指導がそうである。同校では入学時に生徒に志望校を尋ねると、半数以上が地元の神戸大を挙げる。その理由は、「他の大学を知らないから」だ。そうした生徒たちが進路についての広い視野を獲得するために、同校では多様な仕掛けを幾重にも巡らせている()。
 まず、導入期指導として入学時に行われる集団宿泊訓練では、生徒自身が書いた「なぜ小野高校に入学したのか」という作文を基に、班に分かれてディスカッションし、発表する。学習への見通しや目的意識を持たせると共に、互いに夢や志を語ることで刺激を与え合うことを狙いとしている。
 更に、1・2年生では、社会人を招いての特別授業や大学出張講義、卒業生を囲む会、進路講演会、企業・大学訪問、生徒自身が情報収集をしてレポートにまとめる職業研究など、進学やその先の職業について考えさせるための仕掛けを次々と展開している。
 こうした中でも教師が「手応えを感じた」と振り返るのが、08年度と09年度に、2年生を対象に実施した「東京大学見学ツアー」だ。夏休みに希望者を募り、東京大、早稲田大、慶應義塾大のキャンパスや施設を、同校出身の学生のガイド付きで見学する。夜には宿舎に同校出身の東京大の学生を招き、大学生活や受験について質問する場も設けられた。
 「本校の場合、成績最上位層の生徒でも、京都大志望者が多く、東京の大学まで視野に入っていません。結果的に地元の大学に進学するとしても、広い視野を持った上で、自分が進むべき道を決めてほしい。そうした思いでこのツアーを実施しました。09年度の参加者は約20人でしたが、そのうちの何人かは『ぜひ東京の大学に進学したい』と言い出しました。中には東大生の先輩をつかまえて、ずっと質問攻めにしている生徒もいました。やはり生徒に直接現場を体験させるというのは影響が大きいですね。また、ツアーを経験して高い進路意識を持った生徒が、クラスのほかの生徒に与える影響も見逃せません」(後藤先生)
 そして、2年生の3学期には、自分が志望する大学名と学部学科名、志望する理由を書き込んだ「第一志望届」の提出が義務付けられている。この「第一志望届」を基に、「なぜこの大学・学部なのか」ということについて、担任と生徒が納得いくまで何度でも面談を繰り返す。これに加えて09年度は、3年生進級直後に、学年主任の木村先生が生徒全員と志望校選択について話し合う学年主任面談も設けられた。
 「もし進路について何の指導もしないまま、いきなり2年生の3学期になって『第一志望届』を提出させたとしたら、生徒は適切な志望校選択が出来るわけがありません。入学時から進路意識の醸成を目的とした数々の取り組みを積み重ねてきたからこそ、生徒は確かな志望動機に基づいて『第一志望届』を書くことが出来るようになるのです。また『第一志望届』を基に行う面談も、より深く掘り下げることが可能になります。このように、本校では個々の活動を絡み合わせながら、生徒を引き上げていく指導を心掛けています」(木村先生)
小野高校の指導の流れ

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