学生をＦＤ活動に巻き込むため、橋本教授が心掛けてきたポイントは二つ。一つは、自主性を最大限に尊重することだ。サークル的な雰囲気があれば、教員とのフランクな話し合いを通して本音を言えるようになるという。もう一つは、公的な性格を持たせること。見た目はサークルであっても、大学が認めた正式な活動であるという位置付けが、学生の自覚を促すと考えるからだ。橋本教授は「公的な組織にすることで、提案の実現可能性が高まり、それが次の活動へのインセンティブになる」と語る。
　改善委員会に参加した学生からは、「自分が成長した」という声が聞かれるという。委員は学部から推薦されるが、最初は熱心でなかった学生が次第に積極的になるケースもあるようだ。「活動に参加した学生は、企画力や統率力が確実に伸び、教育効果が大きいことを実感する。大学の教育改革に学生の大半が関心を持つことは想定しにくいが、シラバスの改善や新授業のテーマ募集など、身近な問題の改善や変化の積み重ねを通して、改善委員会の活動の影響が一般学生にも徐々に浸透している」。
　学生をＦＤ活動に参加させることのメリットとして、橋本教授は２点を挙げる。第一に、自分たちの手で授業を改善できるのだという意識が広がり、授業が活性化することだ。これが、大学全体の教育水準を引き上げる。第二に、学生によるＦＤはどの大学でもできる活動ではないため、それがそのまま大学の「個性」になることだ。地方の国立大学にとっては大きなセールスポイントだ。特色ある活動への関心が志願者の拡大に結び付き、そういう学生が入学することで、さらに活動が活発化する好循環を生み出す可能性を持っている。