特別企画 2年目の法科大学院

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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新司法試験は資格試験に

 法曹養成で司法修習制度を残したことから、新司法試験合格者数には事実上、一定の制約が生じる。司法制度改革審議会の想定を上回る法科大学院ができたため、当初考えられた合格率より低くなることは予測された。司法試験委員会の意見は、07年度についてはやむを得ない面がある。ただこの年、2年コース修了2100人の受験者のうち1000人を合格させるなら、08年度は、新規に5700人が受験する中から2700人程度は合格させないとバランスがとれない。
 大学が設定したカリキュラムで普通に勉強し卒業しても資格が取れない人が多いのでは、制度として成り立たず、優秀な人材を集められない。この問題の解決の方向性は二つある。
 一つは、第三者評価等によって要求される質に達しない大学院が淘汰されることだ。設置基準が緩やかになり、認可された中には質に疑問なしとしないところもある。教員不足も深刻だ。法学系教員が法学部との兼担で支えているが、負担が重く研究に支障が生じている。
 もう一つは、司法修習を廃止して研修弁護士制度に切り替えるか、法廷弁護士や裁判官・検察官志望者のみが選択して受ける制度とし、司法試験を合格者数の制限がない資格試験にすることである。これには、法科大学院で実務系の教育をどれだけ強化できるかという課題がある。
 法曹人口は社会が決めるとしても、供給過剰になってからそれが認知されるまでにはタイムラグが生じる。教育機関が定員削減などの方向転換に即応できないという問題もある。養成コストが大きいだけに、医師と同様、教育機関の入り口で緩やかに規模をコントロールすべきだ。司法試験に合格しても仕事がない者が多数生じているドイツなどと同じ状況になるのは、避けなければいけない。


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