特別企画 2年目の法科大学院

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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厳しい選抜・評価を

 司法制度改革審議会で法科大学院が必要とされたのは、法律家の質と量が従来の司法試験や司法修習ではカバーできないと考えられたからだ。キーワードは「多様性の確保」で、経済、技術、医学などが分かる法律家、多様な社会経験を持つ法律家を育てることが目標である。仮に法律の知識が従来の司法試験合格者に比べて少ないとしても、こうした資質のある学生を入学させ、新司法試験に合格させるべきだ。
 私の法律事務所では、本学の学生をエクスターンシップで受け入れた。英語学を専攻しTOEICは満点、中国語もできる社会人だ。人権感覚に優れ、憲法訴訟での夜の弁護団会議への参加をいとわず、リサーチもきちんとこなす。事件関係の翻訳をさせると問題点を的確に指摘してくる。事務所から「司法修習生より優れている」と評価された。こんな人を法律家にすることが、制度改革の趣旨だったはずだ。
 司法試験合格率が低いと、まず、社会人が法科大学院に来なくなる。05年度にはそれが顕著に表れた。本学ではあまり生じていないが、学生が先端科目や実務系科目をとらなくなるとも言われている。他大学には、外国での制度や学説を紹介すると「マニアックな話はいらない」と言う学生がいると聞いた。司法試験合格を第一の目標にして学ぶことによる弊害である。
 我々は、自分の頭で問題を考え、調査や制度設計ができ、新しい時代に立ち向かう法律家を育てようとしている。マニュアルしか使えない学生は、修了させないという姿勢で臨むべきだ。「社会生活上の医師」という役割を自覚せず、法律業務を金儲けの手段のように考える学生も同様だ。
 法科大学院が信頼されるためには、各大学院が学生の選抜や成績評価に厳しく臨み、質のいい法律家を送り出す必要がある。


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