特集 「地域」という教科書

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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教員は率先して地域の中へ

―地域連携を教育に生かすために、教員はまず何をすればよいのでしょうか。

橋本 率先して地域の中に入っていき、積極的に交流するべきでしょう。そこに学生を引き込んでいくというのが、順当な手順でしょう。
 本学では、貴重な自然が残るキャンパスを開放する「里山自然学校」を1999年度に発足させました。「里山メイト」と呼ばれる400人以上の住民と一緒になって、里山の保全や管理をしています。そこへ、教員が学生を連れて入り込んでいくのです。地域の人たちと共に活動することで、学習意欲が高まります。

座学では得られない知恵

―学習の動機付け以外には、どんな教育効果が期待できるでしょうか。

橋本 いわゆる座学では得られない、幅広い知恵を身に付けられます。医学で解剖実習を通じて人体への理解が深まるように、地域で生活する人々の日々の暮らしや経験、考え方などに触れることで、教育効果が上がるはずです。教員も地域から学ぶことが多く、学生にとってその姿勢が刺激となって、教育効果はより高まります。

―地域連携で教育効果を高めるためには、どんな点に気をつければいいのでしょうか。

橋本 まず、そのプログラムに教育的フィードバックがあるかどうかを検証することです。地域の行事に学生を参加させるプログラムが増えていますが、それだけでは教育的フィードバックはほとんど期待できません。その行事をより活発なものにするために、ヒアリングを行い、提言をまとめるといったことができれば、一歩前進するでしょう。
 地域連携については、各大学ともまだ手探りの状態にあります。だからこそ、それぞれの取り組みについて情報交換する仕組みが必要なのです。今回、全国の大学に呼びかけて、「全国大学等地域貢献ネットワーク(仮称)」を立ち上げるのも、情報交換を通じて連携の質を少しでも向上させたいからです。

図表

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