特集 「地域」という教科書

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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双方にメリットをもたらす

 より本格的なものづくりは、「卒業研究」や「受託・共同研究」で行う。卒業研究の中には、ものづくりコンテストの成果をベースにしたものが少なくない。例えば、コンテストで電動バイクを製作した学生は、「電動前輪駆動車における特性および走破特性について」という研究に発展させた。1年間、大学と企業を行き来しながら、ものづくりを学んだ。
 中山常務理事は、「企業にとっては、学生の新鮮な発想が刺激になるし、指導教員の研究成果も参考にすることができる。学生は、ものづくりの現場で技術を学べるなど、お互いに利点が多い」と話す。
 卒業研究と並行して実施しているインターンシップが、そのまま採用につながるケースがあり、企業にとっては人材確保というメリットもある。大学側は「インターンシップを拡充し、より長期間にわたって、ものづくりの現場に関わる機会を設けたい」と考え、今後は就職に直結するインターンシップに力を入れるという。
 受託・共同研究で企業のIT化に取り組んだ学生が、在学中にIT化を支援するベンチャー企業を立ち上げるなど、起業に結びついた例が3件ある。こうした実績を基に、04年度には大学院工学研究科に「アントレプレナー専攻」を設置し、地場産業を牽引するアントレプレナー型の人材の育成に乗り出した。
 教育に地元企業の協力が得られるのは、大阪産業大学との間でこれまでに築かれた緊密な関係があるからだ。学内の「新産業研究開発センター」にある最新の製造装置や計測機器を企業に開放し、研究や開発に役立ててもらっている。センターには技術面での様々な相談に応じる機能もあり、産学連携の拠点になっている。このような信頼関係が、教育を支えている。

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教員の指導を受けながら、電動バイクを製作する学生

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