特集 「地域」という教科書

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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【現場レポート 7】
キーワード 小中高校との連携

若い世代をつなぐ場としての「学校インターンシップ」

関西大学

約300人の学生を派遣

 関西大学は2003年度から、地域連携の一環として、学生を小中高校に派遣する「学校インターンシップ・プログラム」を実施している。教職課程で課される教育実習が教科教育をメーンとしているのに対して、学校インターンシッププログラムは学校実務全般の補助を行う点が大きく異なる。大学院生を含め、どの学年でも応募できる。
 研修内容は、クラブ活動や「総合的な学習の時間」の指導補助から、文化祭・体育祭をはじめとする学校行事の準備や留学生のサポートまで多岐にわたる。大学の夏季休暇中1〜3週間程度実施する短期集中型と、1週間に1度、数カ月にわたって実施する週1回型がある。内容、形態、人数などの募集条件を受け入れ校が提示し、学生が応募する。大学での選考や受け入れ校での面接を経て、派遣が決まる。研修を修了すれば1回につき2単位が与えられ、6単位まで卒業単位として認められる。
 このプログラムは、文学部改革の一環として導入された。芝井敬司学部長は、「これからの大学には、教育、研究に加えて、地域連携の強化が不可欠。文学部は教職希望者が多いこともあり、高校でのインターンシップの導入を検討した」と語る。東京都八王子市と市内の大学で先行事例があり、その評価が高かったことも参考になった。
 当初は文学部が運営主体となり、大阪府、大阪市、神戸市など近隣自治体の教育委員会と連携し、高校に学生を派遣していた。学生から小中学校でも研修したいという要望が出て、04年度に派遣先を拡大。05年度からは運営を全学の高大連携運営委員会に移管し、全学プログラムとして展開している。
 03年度は44校から200人以上の受け入れ申し出があり、38校に87(延べ96)人を派遣。04年度は222校からの1050人以上の受け入れ申し出に対して、119校に301(同315)人を派遣した。05年度もほぼ同数の派遣を予定しているが、受け入れ申し出は1500人を超える状況だ。
 高大連携運営委員会委員長で学長補佐の品川哲彦教授は、「小中学校は学校規模が小さく、一人の教師が何でもこなさないといけないため、学校実務を手伝ってほしいという切実な要望がある。一方、高校は教員養成の観点から学生を指導してくれるなど、多少認識の違いはあるものの、派遣を歓迎する声は予想以上に多かった」と語る。
 学生にとっても魅力的なプログラムであるようだ。教職希望者に限定していないこともあって、応募者の約20%は教職を希望しない学生だという。関西大学では、97年度に始めた一般企業でのビジネスインターンシップが定着していたが、職場の雰囲気や仕事の中身がよくわからないまま応募することに不安を覚える学生も多かった。その点、学校であれば安心できると考え、最初の研修先として選ぶ学生が増えたという。


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