飛び入学を評価する時、何をもって成功とするかは難しいが、導入した動機が鍵になることは間違いない。上野教授は、「千葉大学を良くしたい、そうしなければ今後の競争で勝ち残れない。そんな問題意識が出発点だった」と話す。「それには大学院を充実させる必要があり、良い人材を集めなければいけない」。出来上がった人材を一本釣りでスカウトする対症療法ではなく、意欲的で優秀な学生同士が刺激し合って競い合うことで、学部の雰囲気を変えたかったのだという。
　計画を練るうちに、「大学のためだけでなく、社会にとってもためになることをしたい」と考えるようになった。「同じ学年でも４月生まれと早生まれでは１歳近い開きがあるし、能力が開花する早さには個人差がある。しかし、今の社会では、大器晩成という一方の人だけが受け入れられている。開花が早い人にも、受け皿となる新たな選択肢として、飛び入学の機会を提供したかった」。エリート教育という発想は、なかったのだという。
　「受験勉強を経てきた学生と飛び入学生の違いは、明るさだ。飛び入学生の明るさが周りの学生に及ぼす影響は大きい」と、上野教授。
　８年間の入学者は32人。退学者はゼロで、研究者のコースを外れた者もいない。学科の中で１番とか２番の成績で卒業し、大学院に進学する学生も現れている。
　３年次から飛び級で大学院に進んだケースも複数あるという。「飛び入学生が一般の学生にも刺激を与えている。以前は大学院への飛び級は皆無だったが、相談に来る学生が年々増えている」。大学も学生も、夢に向かって歩み続けていることは間違いない。