特集 ―学校教育法改正を入り口に―教員組織をどう活性化するか

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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講座制がなくてもこの機に組織活性化に向けた議論を

―ほかにも、検討委員会の考えを反映できなかった点がありますか。

荻上 「助教」という名称には異論が多いようですが、我々も本当は「助教授」にしたかった。アメリカでは教授・準教授・助教授になっているし、いずれも教育・研究の主体になるわけですから、名称に「教授」という共通部分があっていい。
 ところが、医学部関係者から強く反対されました。講座制が根強く残り、上下関係がはっきりしている分野です。講師も多く、それより格下である現行の助手の名称に「教授」が付くというのは困る、というわけです。それと、法案をチェックする内閣法制局が、「現在の『助教授』とは中身が違うのに名称が同じというのは認められない」と難色を示したようです。
 最終会議の終了ぎりぎりまで議論して、「助教」に落ち着きました。

―講座制が残っているのは旧帝大をはじめとする一部の国立大学だけです。文系にはそもそも助手のポストが少ない、という実態があります。そのため、私立大学、とりわけ文系では「今回の制度改正は自分たちには関係ない」と受け止める人もいるようです。

荻上 改正の具体的な項目だけを見ると、そういうことになるかもしれません。しかし、最初に申し上げたように、改正の狙いは若手のモチベーションアップによる組織の活性化です。これが、日本の大学にとっての大きな課題であり改善を求められていることを、認識してほしいと思います。講座制でなくても、組織の硬直化は、程度の差こそあれ大学共通の問題であるはずです。改正を機に、それぞれの大学で、組織の在り方を見直していただきたい。
 例えば文系では、助手のポストがないことそのものが問題だともいえます。博士号を取得してもいきなり助教授になるのは難しい。改正を機に、研究職を目指す若手のキャリアパスとして、助教のポストを一定程度確保するよう検討してほしいと思います。
 今回の改正では制度の大枠を示しています。その中で、各大学が自分たちの目指す教育・研究を実現するためにはどんな教員組織にするのがいいか、自由に決められます。これまでは、「制度がこうなっているから改革したくてもできない」と弁解できる面がありました。実際には現行制度の下でも大学ごとの判断でできることは多いはず。実際、国際基督教大学は制度上の助教授にあてはまるポストとして準教授を置いています。ただ、現行制度は、助手の名称や位置付けと実態のずれなど問題があるのも事実。
 文科省が動き、制度を変えたことで、今度は大学に球が投げられました。組織を活性化するという狙いに沿った改革をできるかどうかが問われ、それが今後の大学間競争の勝者を決める重要な要因になるはずです。


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